長襦袢と着物の寸法の合わせ方|袖口・振りからはみ出す原因と直し方
着物を着て腕を下ろしたら、袖口から長襦袢がちらりとのぞいている。袖の振りから長襦袢の袖が垂れ下がっている。こうした「はみ出し」の原因は、ほとんどが長襦袢と着物の寸法の組み合わせです。この記事では、長襦袢を着物より何cm短くすればよいかの基本、はみ出す場所ごとの原因、差でわかる判定表、出先でもできる応急処置、仕立て直しや替え袖などの根本的な直し方までを解説します。
基本は「長襦袢は着物より2分短く」
長襦袢は着物のすぐ下に着るので、着物の袖口や裾から見えないよう、着物より少しだけ短く仕立てるのが決まりです。その差の基本が「2分(にぶ)」で、鯨尺の2分は約0.76cmです。部位ごとのめやすをまとめると次のようになります。
| 寸法 | 長襦袢のめやす | 理由 |
|---|---|---|
| 裄 | 着物より2分(約0.5〜1cm)短く | 袖口から長襦袢がはみ出さないように |
| 袖丈 | 着物と同じか2分短く | 袖の振りから長襦袢がのぞかないように |
| 身丈(女性) | 身長×0.83前後の対丈 | おはしょりを取らず、着物の裾から2〜3cm上に裾がくる長さ |
| 身丈(男性) | 着物の身丈より5cmほど短く | 着物の裾から見えないように |
| 前幅・後幅 | 着物より少し狭くてよい | 長襦袢には衽がなく、前を深く合わせるため |
身長160cmの女性なら、着物の裄65cmに対して長襦袢は64.5cm、袖丈は着物49cmに対して48.5cm、長襦袢の身丈は133cmがめやすです。新しく長襦袢を仕立てるときは、いちばんよく着る着物の寸法に合わせておくと、ほかの着物にも合わせやすくなります。
はみ出す場所でわかる原因
長襦袢がどこから見えているかで、合っていない寸法がわかります。直す前に、まず見えている場所を確かめましょう。
| 見えている場所 | おもな原因 | 確かめる寸法 |
|---|---|---|
| 袖口から長襦袢がはみ出す | 長襦袢の裄が着物より長い | 裄(長襦袢 − 着物) |
| 袖の振り(袖の下のあき)から垂れる | 長襦袢の袖丈が着物より長い | 袖丈(長襦袢 − 着物) |
| 袖口の奥に腕が見える | 長襦袢の裄が着物よりかなり短い | 裄(3cm以上短くないか) |
| 着物の裾から長襦袢がのぞく | 長襦袢の身丈が長い・腰紐の位置が低い | 長襦袢の身丈 |
| 振りの中で長襦袢の袖がたまる | 長襦袢の袖丈が着物より短い | 袖丈(4cm以上短くないか) |
袖口から長襦袢が出る原因は寸法だけとは限りません。長襦袢の袖を着物の袖に通したあと、袖の中で長襦袢の袖がねじれていたり、長襦袢の袖付けが着物より外側にずれていたりしても、袖口から長襦袢が出てきます。着たあとに着物と長襦袢の袖口を重ねて持ち、軽く振って中を整えるだけで直ることもあります。
長襦袢と着物の差でわかる判定表
着物・浴衣のサイズ計算の「長襦袢と着物の相性」では、長襦袢から着物の寸法を引いた差で判定しています。差がマイナスなら長襦袢のほうが短い状態です。
| 寸法 | 長襦袢 − 着物 | 判定 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 裄 | 0より大きい | × | 袖口から長襦袢がはみ出す |
| 裄 | 0〜−1.5cm | ○ | 袖口の内側に収まる(理想は−2分=約−0.76cm) |
| 裄 | −1.5〜−3cm | △ | 腕を上げると袖口の奥に腕が見えやすい |
| 裄 | −3cmより短い | × | 袖の中で長襦袢が引っ張られ、腕が見える |
| 袖丈 | +0.5cmより長い | × | 振りから長襦袢がのぞく |
| 袖丈 | +0.5〜−1.5cm | ○ | 袖の中できれいに収まる |
| 袖丈 | −1.5〜−4cm | △ | 袖の中でたるみ、袖の形が少し崩れる |
| 袖丈 | −4cmより短い | × | 振袖・元禄袖にふつうの長襦袢を合わせた状態 |
裄はほんの0.5cmでも長襦袢のほうが長いと、袖口から見えてしまいます。たとえば着物の裄65cmに長襦袢の裄65.5cmを合わせると×です。反対に、裄64cmのアンティーク着物に裄62cmの長襦袢を合わせると差は−2cmで△、普段着なら気にならない程度です。
出先でもできる応急処置
着付けたあとではみ出しに気づいたときや、今日だけ着られればよいときは、長襦袢の袖を一時的に短くする応急処置で乗り切れます。
- 1
袖口からはみ出すときは安全ピンで留める
長襦袢の袖口を内側に1〜2cm折り込み、着物の袖口の内側の縫い代と一緒に小さな安全ピンで留めます。ピンは表から見えないよう、袖口の下側の縫い目に沿わせます。正絹は針穴が残りやすいので、縫い目の上に刺すのがコツです。
- 2
振りから垂れるときは袖の下をつまむ
長襦袢の袖の下(袂の丸み)を内側に折り上げ、仮縫いの糸や安全ピンで留めます。袖丈の差が1〜2cmならこれで十分隠れます。
- 3
裾から見えるときは腰紐で上げる
長襦袢の腰紐をいったんゆるめ、裾を少し引き上げてから結び直します。着物を着たあとなら、身八つ口から手を入れて長襦袢の伊達締めの上に布をたくし込みます。
長く使うなら直す・選び直す
同じ組み合わせで何度も着るなら、応急処置ではなく長襦袢のほうを直すか、着物に合わせやすい長襦袢を選び直すのがおすすめです。
| 方法 | 向いている場合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 長襦袢の裄を詰める | 長襦袢の裄が着物より長い | 袖付けを縫い直すだけなので比較的手軽 |
| 長襦袢の袖丈を直す | 袖丈が1〜2cm合わない | 袖の下の丸みを縫い直す |
| うそつき袖(替え袖)を使う | 袖丈・裄の違う着物を何枚も着る | 着物ごとに袖だけ付け替えられる |
| 半襦袢+裾よけにする | 身丈が合う長襦袢がない | 上下が分かれているので身丈の心配がない |
| 二部式の長襦袢にする | 身長が高い・低いなど既製品が合わない | 上下の丈を別々に調整できる |
うそつき袖は、半襦袢や袖のない肌着に、着物の袖丈に合わせた袖だけをマジックテープやスナップ、しつけ糸で付ける方法です。袖丈49cmの着物には49cm前後の袖、元禄袖の着物には長い袖と、着物ごとに付け替えられるので、リサイクル着物を何枚も楽しむ人にとくに便利です。
手持ちの長襦袢と着物の寸法の測り方
長襦袢と着物の相性を確かめるには、両方の裄と袖丈を同じ測り方で測るのが大切です。仕立て票が残っていればその数字を使えますが、仕立て直しや洗い張りで寸法が変わっていることもあるので、一度実物を測っておくと確実です。
- 1
平らな場所に広げて背縫いをまっすぐにする
着物(長襦袢)を背中側を上にして広げ、背縫いが一直線になるよう整えます。袖は横にまっすぐ伸ばし、しわを手でならします。
- 2
裄は背縫いから袖口まで
衿の付け根の背縫いの位置から、肩山(肩の折り目)に沿って袖口の端までを測ります。肩幅(背縫いから袖付けの縫い目まで)と袖幅(袖付けから袖口まで)を別々に測って足しても同じです。
- 3
袖丈は袖山から袖の下まで
袖の肩山の折り目から、袖の下の端(袂のいちばん下)までをまっすぐ測ります。丸みのある部分は、丸みが始まる前のまっすぐな線の延長で測ります。
- 4
長襦袢の身丈は肩山から裾まで
背縫いの衿の付け根から裾までを測ります。半衿がついている場合も、衿ではなく肩山の位置から測ります。
測った寸法は、着物ごとに「裄・袖丈・身丈」をメモしておくと便利です。スマートフォンのメモに残しておけば、出先で気になったリサイクル着物の寸法と、手持ちの長襦袢をその場で比べられます。
元禄袖・振袖に合わせる長襦袢
アンティーク着物に多い元禄袖(袖丈55〜70cmほど)や、振袖(小振袖は75cm前後、中振袖は85〜100cm)は、ふつうの長襦袢(袖丈49cm前後)では袖丈が足りず、振りの中で長襦袢の袖がたまってしまいます。
- 元禄袖には、袖丈の合う長襦袢か、長めの替え袖を用意する
- 振袖には、振袖用の長襦袢(袖丈が振袖と同じ長さ)を合わせる
- 袖の長さが合っていれば、長襦袢の袖の色を振りから少し見せるのも装いのうち
- 裄も短めのことが多いので、袖丈と同時に裄の差も確かめる
袖丈58cmの元禄袖の着物に袖丈49cmの長襦袢を合わせると、差は−9cmで×です。この組み合わせでは、振りから長襦袢がのぞくことはありませんが、袖の中で着物の袖が支えを失い、袖の形が崩れます。アンティーク着物の寸法の特徴はリサイクル着物のサイズの選び方でも紹介しています。
手持ちの長襦袢との相性をツールで確かめる
着物・浴衣のサイズ計算の「長襦袢と着物の相性」タブに、着物と長襦袢それぞれの裄・袖丈を入れると、差と ○△× の判定、はみ出しの直し方が表示されます。手持ちの長襦袢の寸法を一度測ってメモしておくと、リサイクル着物を買うたびにすぐ確かめられます。
長襦袢を新しく仕立てるときは、「体から寸法を出す」タブで長襦袢を選ぶと、身丈・裄・袖丈のめやすが着物より短い値で表示されます。寸法表に「1尺2寸8分」のように鯨尺で書かれているときは鯨尺とcmの換算表、着物そのものの寸法の意味は着物の寸法の見方を参考にしてください。
よくある質問
- 長襦袢が袖口からはみ出るのはなぜですか?
- 多くは長襦袢の裄が着物の裄より長いことが原因です。0.5cmでも長いと袖口から見えます。長襦袢の裄は着物より2分(約0.76cm)短いのが理想です。寸法が合っていても、袖の中で長襦袢がねじれていると出てくることがあります。
- 長襦袢の袖が振りから出るときの直し方は?
- 長襦袢の袖丈が着物より長いのが原因です。今日だけなら袖の下を内側に折り上げて仮縫いか安全ピンで留め、長く使うなら長襦袢の袖丈を直すか、着物の袖丈に合わせた替え袖(うそつき袖)を使います。
- 長襦袢の裄は着物より何cm短くすればいいですか?
- 2分(約0.76cm)、実際には0.5〜1cm短くするのが基本です。1.5cmまで短いのは問題ありませんが、3cm以上短いと袖の中で長襦袢が引っ張られ、腕を上げたときに袖口から腕が見えやすくなります。
- うそつき袖とは何ですか?
- 半襦袢や袖のない肌着に、着物の袖丈に合わせた袖だけを付け替えて使う替え袖のことです。外から見ると長襦袢を着ているように見えるので「うそつき」と呼ばれます。袖丈の違う着物を何枚も着る人に便利です。
- 長襦袢の身丈はどれくらいがいいですか?
- 女性の長襦袢はおはしょりを取らない対丈で、身長×0.83前後がめやすです。身長160cmなら133cm前後で、着物の裾から2〜3cm上に長襦袢の裾がきます。男性は着物の身丈より5cmほど短くします。
この記事で紹介したツール
あわせて読みたい
鯨尺とcmの換算表|1尺・1寸・1分は何センチ?着物の寸法の読み方
母や祖母から譲り受けた着物の寸法メモ、呉服店の仕立て票、古い和裁の本。そこに書かれている「1尺7寸」「4尺2寸5分」は、着物専用の物差しである鯨尺(くじらじゃく)の寸法です。建築で使う尺(曲尺)とは長さが違うので、同じ「1尺」でも換算を間違えると7cm以上ずれてしまいます。この記事では、鯨尺の単位と cm の換算、着物でよく出てくる寸法の換算表、cm から鯨尺への直し方、曲尺との違い、寸法表の書き方の読み方、反物の長さまでをまとめます。
記事を読む →着物の寸法の見方|身丈・裄・袖丈・前幅・後幅の意味と身長別のめやす表
呉服店の寸法表やフリマアプリの商品ページには、身丈・裄・袖丈・前幅・後幅といった見慣れない言葉が並びます。洋服の S・M・L と違い、着物は「どこからどこまでの長さか」を知らないと、自分に合うかどうか判断できません。この記事では、着物の寸法表に出てくる7か所の意味、自分の体で測る3か所の測り方、女性・男性それぞれの身長別のめやす表(cm と鯨尺)、着物・浴衣・長襦袢で寸法が変わるところまでをまとめます。
記事を読む →リサイクル着物のサイズの選び方|フリマで買う前に確かめる寸法と許容範囲
リサイクル着物やアンティーク着物は、新品の何分の一かの値段で手に入る一方、試着できないまま買うことがほとんどです。届いてから「裄が短くて手首が出る」「おはしょりが取れない」と気づいても、仕立て直しには費用がかかります。この記事では、フリマアプリや通販の商品ページで確かめる寸法の順番、どこまでずれても着られるかの許容範囲、実際の寸法を使った判定例、アンティーク着物ならではの注意点、出品者に聞いておきたい質問までをまとめます。
記事を読む →