ピストのギア比の選び方|48×17が定番の理由とスキッドパッチ早見表
ピスト(固定ギア)やシングルスピードはギアが 1 つしかないので、ギア比の選び方がそのまま乗りやすさを決めます。軽すぎると平地で脚が回りきってしまい、重すぎると出だしと坂がつらくなります。さらに固定ギアでは、スキッドしたときにタイヤのすり減る場所の数「スキッドパッチ」も気にする必要があります。この記事では、定番の 48×17 がなぜ選ばれるのか、用途別のギア比と速度、スキッドパッチの仕組みと計算方法、44〜52T × 14〜18T の早見表、ギアを替えたときのチェーンのコマ数、公道を走るときの注意までをまとめます。
ギアが 1 つだから「出だし・巡航・坂」のバランスで選ぶ
変速のある自転車は場面ごとにギアを選べますが、ピストやシングルスピードは 1 つのギアですべてをこなします。しかも固定ギアは、後輪が回っている限りペダルも回り続けるので、下り坂や高速域ではケイデンスが勝手に上がります。ギア比は次の 3 つのバランスで決めます。
- 信号からの出だし:ギアが重いほど、止まった状態から踏み出すのがつらい
- 巡航速度:いつも走りたい速度を 80〜90rpm で出せるか
- 坂と下り:登りで踏み切れるか、下りで脚が回りすぎないか(固定ギアは足を止められない)
ギアの重さの比べ方は、ギア比(前 ÷ 後ろ)か、ペダル 1 回転で進む距離の展開(ギア比 × タイヤ周長)が一般的です。海外の資料ではギアインチがよく使われ、ピストの世界では 70〜80 インチあたりが街乗りの定番とされています。
48×17 が定番と言われる理由
完成車のピストでよく付いているのが前 48T・後ろ 17T です。700×28C のタイヤで計算すると、次のようになります。
| 項目 | 48×17 の値 |
|---|---|
| ギア比 | 2.82 |
| 展開(ペダル 1 回転で進む距離) | 6.01m |
| ギアインチ | 75.4in |
| 60rpm の速度 | 21.7km/h |
| 80rpm の速度 | 28.9km/h |
| 90rpm の速度 | 32.5km/h |
| 100rpm の速度 | 36.1km/h |
| スキッドパッチ | 17 か所(片足・両足とも) |
60rpm でゆっくり回して 22km/h、90rpm で 32km/h と、街中の流れに乗るのにちょうどいい重さです。そして 48 と 17 は共通の約数を持たないので、スキッドパッチが 17 か所と最大になり、タイヤが均等にすり減ります。「重すぎず軽すぎず、タイヤも長持ちする」のが定番になっている理由です。
用途別のおすすめギア比と速度
700×28C で計算した速度と、片足/両足のスキッドパッチの数です。迷ったら 48×17 を基準に、重くしたいか軽くしたいかで前後の歯数を 1〜2T 動かして考えます。
| 用途 | ギア | ギア比 | 80rpm | 90rpm | スキッドパッチ |
|---|---|---|---|---|---|
| 坂が多い・はじめての固定ギア | 44×17 | 2.59 | 26.5km/h | 29.8km/h | 17/17 |
| 坂が多い・軽め | 46×18 | 2.56 | 26.1km/h | 29.4km/h | 9/18 |
| 街乗りのやや軽め | 46×17 | 2.71 | 27.7km/h | 31.1km/h | 17/17 |
| 街乗りの定番 | 48×17 | 2.82 | 28.9km/h | 32.5km/h | 17/17 |
| 平地中心・少し重め | 49×17 | 2.88 | 29.5km/h | 33.2km/h | 17/34 |
| 平地でスピード | 50×17 | 2.94 | 30.1km/h | 33.8km/h | 17/17 |
| 平地でスピード | 47×16 | 2.94 | 30.0km/h | 33.8km/h | 16/32 |
| 重め・脚力に自信 | 52×17 | 3.06 | 31.3km/h | 35.2km/h | 17/17 |
同じ重さのギアでも、歯数の組み合わせでスキッドパッチは大きく変わります。たとえば 48×16 と 51×17 はどちらもギア比 3.00 ですが、48×16 はスキッドパッチが 1 か所(両足でも 2 か所)しかなく、51×17 も同じく 1 か所です。ギア比 3.00 前後にしたいなら、47×16(2.94・16/32)や 49×16(3.06・16/32)のように、割り切れない組み合わせを選びます。
スキッドパッチとは?——計算方法
固定ギアでペダルを止めて後輪をロックさせ、滑らせて減速するのがスキッドです。スキッドするときは、利き足のクランクが水平になった位置など、決まったペダルの位置で止めることがほとんどです。そのとき地面にこすれるタイヤの場所が何か所に分かれるかが、スキッドパッチの数です。少ないと同じ場所ばかりすり減り、タイヤに平らな部分ができて早くだめになります。
- 1
前と後ろの歯数の最大公約数を求める
48 と 17 なら最大公約数は 1、48 と 16 なら 16、48 と 18 なら 6 です。
- 2
歯数を最大公約数で割って約分する
48/17 は約分できないので 48/17 のまま。48/16 は 3/1、48/18 は 8/3 になります。
- 3
約分した後ろの数が、片足のスキッドパッチ
48×17 は 17 か所、48×16 は 1 か所、48×18 は 3 か所です。
- 4
両足でスキッドするなら、約分した前の数が奇数のとき 2 倍
左右どちらの足でも止められる人は、クランクが半回転ずれた位置でも止まるので、約分した前の数が奇数ならパッチが倍になります。48×16(3/1)は両足なら 2 か所、49×17(49/17)は 34 か所です。
一般的に、片足で 7 か所以上あればタイヤの減りは十分分散するとされ、3 か所以下は避けたい組み合わせです。自転車 ギア比 計算ツールの「ピスト・スキッドパッチ」タブで前と後ろの歯数を入れると、片足と両足のスキッドパッチ、ギア比、展開がすぐに出ます。
ギア比とスキッドパッチの早見表(44〜52T × 14〜18T)
各マスの上がギア比、下が「片足/両足」のスキッドパッチの数です。3 か所以下の組み合わせは、タイヤが偏ってすり減りやすいので注意してください。
| 前\後ろ | 14T | 15T | 16T | 17T | 18T |
|---|---|---|---|---|---|
| 44T | 3.14・7/7 | 2.93・15/15 | 2.75・4/8 | 2.59・17/17 | 2.44・9/9 |
| 45T | 3.21・14/28 | 3.00・1/2 | 2.81・16/32 | 2.65・17/34 | 2.50・2/4 |
| 46T | 3.29・7/14 | 3.07・15/15 | 2.88・8/16 | 2.71・17/17 | 2.56・9/18 |
| 47T | 3.36・14/28 | 3.13・15/30 | 2.94・16/32 | 2.76・17/34 | 2.61・18/36 |
| 48T | 3.43・7/7 | 3.20・5/5 | 3.00・1/2 | 2.82・17/17 | 2.67・3/3 |
| 49T | 3.50・2/4 | 3.27・15/30 | 3.06・16/32 | 2.88・17/34 | 2.72・18/36 |
| 50T | 3.57・7/14 | 3.33・3/3 | 3.13・8/16 | 2.94・17/17 | 2.78・9/18 |
| 51T | 3.64・14/28 | 3.40・5/10 | 3.19・16/32 | 3.00・1/2 | 2.83・6/12 |
| 52T | 3.71・7/7 | 3.47・15/15 | 3.25・4/8 | 3.06・17/17 | 2.89・9/9 |
表を見ると、17T のコグは 51T 以外のどのチェーンリングと組んでもスキッドパッチが 17 か所になります。17 が素数で、51(= 17 × 3)以外とは共通の約数を持たないためです。後ろに 17T を選ぶのが定番になっているのは、この扱いやすさも理由の 1 つです。逆に 48T は 16T・18T・15T と組むとパッチが少なくなるので、48T のまま重さを変えたいときは注意が必要です。
ギアを替えたらチェーンは何コマ?
ピストやシングルスピードにはチェーンの張りを調整するディレイラーがないので、後輪の位置(エンドのどこで固定するか)とチェーンのコマ数で張りを合わせます。コマ数は偶数にしかできないため、ギアを替えたら後輪の位置がエンドの調整範囲に収まるかを確かめる必要があります。
| ギア(軸間 400mm のとき) | ぴったりの長さ | 短い側 | そのときの軸間 | 長い側 | そのときの軸間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 48×17 | 96.26 コマ | 96 コマ | 398.3mm | 98 コマ | 411.2mm |
| 48×16 | 95.82 コマ | 94 コマ | 388.3mm | 96 コマ | 401.2mm |
| 48×18 | 96.72 コマ | 96 コマ | 395.4mm | 98 コマ | 408.2mm |
| 46×17 | 95.17 コマ | 94 コマ | 392.5mm | 96 コマ | 405.3mm |
| 49×17 | 96.82 コマ | 96 コマ | 394.8mm | 98 コマ | 407.6mm |
たとえば軸間 400mm で 48×17 を使うなら、96 コマにして後輪の軸を 398.3mm の位置まで前に寄せるか、98 コマにして 411.2mm まで後ろに引くかのどちらかです。後ろのコグを 1T 替えると必要なチェーンは約半コマ(約 6mm)変わり、後輪の位置にするとその半分の 3mm 前後ずれます。エンドの長さに余裕がないフレームでは、ハーフリンクチェーンを使う方法もあります。
公道を走るときの注意
日本の公道では、自転車に前後輪それぞれのブレーキを付けることが道路交通法と各都道府県の規則で求められています。固定ギアのスキッドや足で止める操作はブレーキとして認められないため、ブレーキのない競技用のピストで公道を走ると違反になります。スキッドはあくまで補助の技術と考え、前後ともブレーキを付けた状態で乗ってください。
- はじめての固定ギアは、軽め(44×17〜46×17 前後)から慣れると出だしと下りが怖くない
- 下り坂ではケイデンスが勝手に上がる。48×17 で 40km/h なら約 111rpm になる
- 雨の日はスキッドが効きすぎて後輪が流れやすい。ブレーキで早めに減速する
- タイヤの偏摩耗が気になったら、ギアを変えるか、タイヤの向き(取り付け位置)を回してずらす
変速付きのロードバイクとの比較や、ケイデンスと速度の関係はケイデンスと速度の早見表、速度表示を正しくするためのタイヤ周長はサイコンのタイヤ周長の設定値でまとめています。
よくある質問
- ピストのおすすめのギア比は?
- 街乗りなら 48×17(ギア比 2.82)が定番です。700×28C で 90rpm のとき約 32.5km/h、スキッドパッチは 17 か所です。坂が多いなら 44×17〜46×17、平地でスピードを出したいなら 49×17〜50×17 あたりから選ぶと扱いやすくなります。
- スキッドパッチの計算方法を教えてください。
- 前と後ろの歯数を最大公約数で割って約分し、約分した後ろの数が片足のスキッドパッチです。両足でスキッドする場合は、約分した前の数が奇数なら 2 倍になります。48×17 は 17 か所、48×16 は 1 か所(両足で 2 か所)です。
- 48×16 はなぜよくないと言われるのですか?
- 48 は 16 で割り切れるため、スキッドパッチが 1 か所(両足でも 2 か所)しかなく、タイヤの同じ場所ばかりがすり減るからです。同じくらいの重さにしたいなら、47×16(16/32)や 49×16(16/32)などが候補になります。
- ギア比 2.8 で時速何 km 出ますか?
- 700×28C(周長 2130mm)なら、展開は約 6.0m で、80rpm で約 28.6km/h、90rpm で約 32.2km/h、100rpm で約 35.8km/h です。速度 = ギア比 × タイヤ周長(m)× ケイデンス × 60 ÷ 1000 で計算できます。
- コグを 1T 替えるとチェーンは何コマ変わりますか?
- 後ろのコグを 1T 変えると、必要なチェーンの長さは約 0.47 コマ変わります。コマ数は 2 コマ単位でしか変えられないので、1T の交換なら多くの場合は後輪の位置の調整で対応でき、2〜4T 変えるときにコマ数の見直しが必要になります。
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