総額表示義務とは|値札とメニューの税込価格の書き方
「1,000円+税」と書かれた値札は、消費者向けの店頭では認められていません。2021年4月から、税込価格をはっきり示す総額表示が義務になっているためです。この記事では、義務の対象になる表示とならない表示、OKな書き方とNGな書き方、税込価格の端数をどう決めるかを整理します。
総額表示義務とは何か
総額表示義務とは、消費者に向けてあらかじめ価格を表示するとき、消費税を含めた支払総額を示さなければならない、という決まりです。消費税法に定められており、2013年から続いていた「税抜表示でもよい」という特例が2021年3月末で終わったため、現在は税込価格の表示が原則になっています。
狙いは、レジに行くまで支払額が分からない状態をなくすことです。税抜表示だけだと、消費者は自分で1.1倍して比較しなければならず、店ごとに表示がばらつくと価格の比較もできません。総額表示は「表示を見ただけで、いくら払うか分かる」状態を作るためのルールです。
OKな書き方とNGな書き方
判断の基準は単純で、「支払う総額がその場で分かるか」です。税込価格が書かれていれば、税抜価格や消費税額を併記しても構いません。逆に、税込価格がどこにもなければアウトです。以下は税抜10,000円・消費税1,000円の商品の例です。
| 表示例 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 11,000円 | OK | 支払総額が示されている |
| 11,000円(税込) | OK | 総額であることが明確 |
| 11,000円(うち消費税1,000円) | OK | 総額が主で、内訳は任意 |
| 11,000円(税抜10,000円) | OK | 総額が示されていれば併記可 |
| 10,000円(税込11,000円) | OK | 総額が同時に読み取れる |
| 10,000円(税抜) | NG | 総額が分からない |
| 10,000円+税 | NG | 計算しないと総額にならない |
| 10,000円(税別) | NG | 同上 |
税抜価格を大きく、税込価格を小さく添える書き方も、総額が読み取れる限りは違反ではありません。ただし税抜価格だけが目立つ表示は、景品表示法の観点で「安く見せている」と指摘されうるため、実務では税込価格を主役にしておくのが無難です。
対象になる表示・ならない表示
義務がかかるのは「不特定多数の消費者に向けて、あらかじめ価格を表示する場合」です。この条件から外れるものは対象になりません。
| 表示の種類 | 総額表示 | 補足 |
|---|---|---|
| 値札・棚札・店内POP | 必要 | 商品ごとの表示 |
| チラシ・カタログ・DM | 必要 | 紙・電子を問わない |
| 飲食店のメニュー | 必要 | 店頭の見本や看板も含む |
| ECサイトの商品ページ | 必要 | 一覧ページの価格も対象 |
| 見積書・請求書・契約書 | 不要 | あらかじめの表示ではない |
| 事業者間の取引・価格表 | 不要 | 相手が消費者ではない |
| 口頭での価格の伝達 | 不要 | 表示に当たらない |
請求書が対象外なのは、特定の相手に個別に出す書類で、あらかじめ掲げる価格表示ではないからです。ただし請求書には、インボイス制度側のルールとして税率ごとの区分と消費税額の記載が必要です。書類ごとに求められるものが違うので、請求書に書く項目と端数処理も合わせて確認しておくと迷いません。
税込価格の端数をどう決めるか
税抜価格に税率を掛けると、たいてい1円未満の端数が出ます。この端数を切り捨てるか、四捨五入するか、切り上げるかは事業者が選べます。決まりがないぶん、社内で方針を1つに決めておかないと、同じ商品でも媒体によって表示が1円違う、という事故が起きます。
| 税抜価格 | 切り捨て | 四捨五入 | 切り上げ |
|---|---|---|---|
| 1,980円 | 2,178円 | 2,178円 | 2,178円 |
| 1,985円 | 2,183円 | 2,184円 | 2,184円 |
| 3,333円 | 3,666円 | 3,666円 | 3,667円 |
| 8,888円 | 9,776円 | 9,777円 | 9,777円 |
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税込価格から値付けする方法もある
「税込980円」のようにきりのいい総額を先に決め、そこから税抜価格を逆算する方法です。値札が読みやすくなり、レジの合計も揃います。税抜額は980÷1.1=890.9…となり、端数は会計側で処理します。
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税抜価格から積み上げる方法
原価や卸値をもとに税抜価格を決め、税込を計算して表示します。仕入れとの対応が分かりやすい一方、税込価格が1,078円のような半端な数字になりがちです。
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決めた方法を全媒体でそろえる
値札・Webサイト・チラシで丸め方が違うと、同じ商品に複数の価格が存在することになります。端数処理の方法をマスタに持たせ、表示する側では再計算しないのが安全です。
消費税・サービス料計算ツールでは、税抜と税込のどちらからでも変換でき、端数処理は切り捨て・四捨五入・切り上げから選べます。税率も10%と8%を切り替えられるので、軽減税率の対象商品を含む価格表を作るときも、8%と10%の振り分けを確認しながら値付けを詰められます。セール価格を決める場合は、値引きと消費税のどちらを先に計算するかで表示が変わるため、割引計算のやり方もあわせて確認してください。
よくある質問
- 「1,000円+税」という表示は今も使えますか?
- 消費者向けの店頭表示や広告では使えません。税抜表示を認める特例が2021年3月末で終わり、税込の支払総額を示す総額表示が義務になっています。「1,100円(税抜1,000円)」のように総額が読み取れる形であれば、税抜価格を併記しても構いません。なお、事業者間の取引で使う価格表や見積書は総額表示の対象外なので、税抜表記のままで問題ありません。
- 税抜価格を大きく、税込価格を小さく書いてもいいですか?
- 総額表示のルール上は、税込価格が示されていれば文字の大きさの決まりはありません。ただし税抜価格だけが目立つ表示は、実際より安い印象を与えるとして景品表示法の観点で問題になる可能性があります。実務では税込価格を主表示にし、税抜価格を補足として添える形が安全です。どちらを大きくするか社内で統一しておくと、媒体ごとの食い違いも防げます。
- 税込価格の端数は切り捨てと四捨五入のどちらが正しいですか?
- どちらでも構いません。1円未満の端数処理の方法に法律上の指定はなく、事業者が選べます。大切なのは選ぶこと自体より、全商品・全媒体で同じ方法をそろえることです。値札は切り捨て、Webサイトは四捨五入といった状態になると、同じ商品に2つの価格が存在することになります。端数処理済みの価格を商品マスタに持たせ、表示側で計算し直さない運用が確実です。
- 請求書や見積書も税込表示にしないといけませんか?
- 総額表示の義務はかかりません。特定の相手に個別に出す書類で、不特定多数に向けてあらかじめ掲げる価格表示に当たらないためです。ただしインボイス制度のもとでは、請求書に税率ごとに区分した対価の額と消費税額を記載する必要があります。総額表示のルールとは別の要件なので、税抜で書く場合も、税率ごとの区分と消費税額の記載は欠かせません。
この記事で紹介したツール
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