仕組み解説公開日 読了目安 約10分

リバーブのプリディレイとLFOをBPMに合わせる|msとHzの計算

ディレイだけでなく、リバーブのプリディレイや残響の長さ、トレモロやオートパン、フィルターの揺れ(LFO)の速さも、曲のテンポに合わせると音がすっきりまとまります。とはいえ、リバーブはミリ秒、LFO は Hz で設定することが多く、BPM からどう換算すればいいのかわかりにくいところです。この記事では、テンポに合わせたリバーブのプリディレイとディケイの考え方と BPM 別の目安、音符の長さを Hz に直す計算式と早見表、コンプレッサーのリリースやサイドチェインに応用するコツまでをまとめます。

リバーブや LFO をテンポに合わせるとなにが変わるか

リバーブの残響が次の拍に食い込んでいると、キックやスネアのアタックがぼやけ、ミックス全体が濁って聞こえます。逆に、残響がちょうど次のフレーズの前で消えるように長さを決めると、空間の広がりを保ったままリズムがはっきりします。トレモロやオートパンのように音量や左右の位置を周期的に揺らすエフェクトも、揺れの速さが拍と合っていれば、リズムの一部として気持ちよく聞こえます。

ただし、テンポに合わせた値はあくまで出発点です。ミリ秒ぴったりにすることより、計算で出した値を基準にして耳で前後を調整することのほうが大切です。基準の値がわかっていれば、闇雲につまみを回すより早く、狙った響きにたどり着けます。

プリディレイは「原音と残響のすき間」

プリディレイは、原音が鳴ってから残響が始まるまでの時間です。プリディレイを長めにとると、原音のアタックが残響に埋もれずにはっきり聞こえ、ボーカルの言葉やスネアの芯が前に出ます。短くすると原音と残響がすぐに混ざり、楽器が奥に引っ込んだように聞こえます。

  • プリディレイが短い(0〜10 ms):音が奥にある、壁の近くで鳴っているような響き
  • プリディレイが中くらい(10〜40 ms):自然な部屋やホールの響き
  • プリディレイが長い(40〜100 ms 以上):原音が前にはっきり出て、残響があとから広がる。ボーカルの定番

テンポに合わせる場合は、プリディレイを 64 分音符や 128 分音符などの細かい音符の長さにします。BPM 120 なら 64 分音符は 31.25 ms、128 分音符は約 15.6 ms です。ふつうの音符の長さにそろえることで、残響の立ち上がりがリズムの細かい刻みに乗ります。

BPM 別・リバーブのプリディレイとディケイの目安

テンポに合わせたリバーブでよく使われるのが、「プリディレイ+ディケイ(残響が消えるまでの時間)= ちょうど音符 1 つぶんの長さ」にする考え方です。響きの種類ごとに、プリディレイと全体の長さを次のように決めます。

響きの種類プリディレイ全体の長さ(プリディレイ+ディケイ)
ホール64 分音符2 小節
大きめのルーム128 分音符1 小節(全音符)
小さめのルーム256 分音符2 分音符
タイトな空間(アンビエンス)512 分音符4 分音符

この考え方で、よく使う BPM のプリディレイとディケイを計算すると次のようになります(プリディレイは小数第 1 位、ディケイは整数に四捨五入)。

BPMホール大きめのルーム小さめのルームタイトな空間
7053.6 ms / 6804 ms26.8 ms / 3402 ms13.4 ms / 1701 ms6.7 ms / 850 ms
8046.9 ms / 5953 ms23.4 ms / 2977 ms11.7 ms / 1488 ms5.9 ms / 744 ms
9041.7 ms / 5292 ms20.8 ms / 2646 ms10.4 ms / 1323 ms5.2 ms / 661 ms
10037.5 ms / 4763 ms18.8 ms / 2381 ms9.4 ms / 1191 ms4.7 ms / 595 ms
11034.1 ms / 4330 ms17 ms / 2165 ms8.5 ms / 1082 ms4.3 ms / 541 ms
12031.3 ms / 3969 ms15.6 ms / 1984 ms7.8 ms / 992 ms3.9 ms / 496 ms
12829.3 ms / 3721 ms14.6 ms / 1860 ms7.3 ms / 930 ms3.7 ms / 465 ms
14026.8 ms / 3402 ms13.4 ms / 1701 ms6.7 ms / 850 ms3.3 ms / 425 ms
15025 ms / 3175 ms12.5 ms / 1588 ms6.3 ms / 794 ms3.1 ms / 397 ms
17022.1 ms / 2801 ms11 ms / 1401 ms5.5 ms / 700 ms2.8 ms / 350 ms

ここでのディケイは、残響がほぼ聞こえなくなるまでの時間の目安です。プラグインによってディケイの定義(音が 60 dB 下がるまでの時間など)が違うため、同じ数字を入れても聞こえ方は少し変わります。数字を入れたあと、曲を再生して次の拍のキックやスネアが濁らないか確かめ、濁るならディケイを短くします。BPM タップ計測・ディレイタイム計算ツールでは、BPM を入れると 4 種類の響きのプリディレイ・ディケイ・合計をまとめて表示します。

LFO の速さ(Hz)を BPM に合わせる計算式

トレモロ、オートパン、コーラスやフランジャーの揺れ、フィルターのワウワウ、シンセのビブラートなどは、LFO(低周波発振器)で周期的に動かしています。LFO の速さは「1 秒間に何回揺れるか」を表す Hz(ヘルツ)で設定することが多いので、音符の長さを Hz に直す必要があります。

計算式は「Hz = 1000 ÷ 音符の長さ(ms)」です。音符の長さは「60000 ÷ BPM × 倍率」なので、まとめると「Hz = BPM ÷ 60 ÷ 倍率」になります。BPM 120 の 4 分音符(500 ms)なら 1000 ÷ 500 = 2 Hz、8 分音符(250 ms)なら 4 Hz、16 分音符(125 ms)なら 8 Hz です。

BPM1 小節2 分4 分付点 8 分8 分3 連 8 分16 分
900.375 Hz0.75 Hz1.5 Hz2 Hz3 Hz4.5 Hz6 Hz
1000.417 Hz0.833 Hz1.667 Hz2.222 Hz3.333 Hz5 Hz6.667 Hz
1200.5 Hz1 Hz2 Hz2.667 Hz4 Hz6 Hz8 Hz
1280.533 Hz1.067 Hz2.133 Hz2.844 Hz4.267 Hz6.4 Hz8.533 Hz
1400.583 Hz1.167 Hz2.333 Hz3.111 Hz4.667 Hz7 Hz9.333 Hz
1500.625 Hz1.25 Hz2.5 Hz3.333 Hz5 Hz7.5 Hz10 Hz
1740.725 Hz1.45 Hz2.9 Hz3.867 Hz5.8 Hz8.7 Hz11.6 Hz

エフェクト別・テンポに合わせるときの目安

エフェクトよく使う音符BPM 120 のときポイント
トレモロ(音量の揺れ)8 分・16 分・3 連 8 分4 Hz・8 Hz・6 Hz3 連 8 分にすると跳ねたリズムになり、ブルースやサーフロックに合う
オートパン(左右の揺れ)2 分・1 小節1 Hz・0.5 Hz速すぎると酔ったような感覚になるので、ゆっくりめが無難
フィルターのワウワウ4 分・8 分2 Hz・4 Hzダンスミュージックのベースやシンセでよく使う
コーラス・フランジャー1 小節〜2 小節0.5 Hz・0.25 Hzゆっくり揺らす用途なので、ぴったり合わせなくても違和感は少ない
ゲート・チョップ16 分・32 分8 Hz・16 Hzトランスゲートのような刻む効果に

DAW のプラグインに「Sync」「Tempo Sync」のボタンがあれば、オンにして音符を選ぶだけでテンポに追従します。外部のペダルエフェクターやアナログシンセのように同期できない機材では、計算した Hz に合わせて設定します。テンポが少しでも違うと、曲が進むにつれて揺れの位置がずれていくので、曲の BPM を正確に測ることが前提になります。

コンプレッサーのリリースやサイドチェインへの応用

音符の長さの計算は、コンプレッサーのリリースタイムを決めるときにも役立ちます。リリースは、音量を下げたあとに元に戻るまでの時間です。リリースが長すぎると、次のキックが来ても音量が戻りきっておらず、ずっと押しつぶされた音になります。短すぎると、音量が戻る動きが「ポンピング」として目立ちます。

  • ドラムバスのコンプ:リリースを 8 分音符か 16 分音符の長さにして、次のヒットまでに戻りきるようにするのが目安(BPM 120 なら 250 ms・125 ms)
  • キックでベースやシンセを下げるサイドチェイン:4 つ打ちならリリースを 4 分音符より少し短めにすると、キックとキックの間で音量がふくらむ、ダンスミュージックらしいうねりになる
  • ボーカルのコンプ:言葉の長さで考えることが多く、テンポにこだわりすぎなくてよい

コンプの効き方は入力レベルやアタック、レシオによっても変わるので、計算した値はあくまでスタート地点です。ゲインリダクションのメーターが次のキックの直前で 0 近くに戻っているかを目で確かめながら調整すると、狙いどおりになりやすくなります。ディレイタイムの合わせ方はディレイタイムの計算方法にまとめています。

よくある質問

リバーブのプリディレイは何 ms がいいですか?
自然な響きなら 10〜40 ms、ボーカルの言葉をはっきりさせたいなら 40〜100 ms くらいが目安です。テンポに合わせるなら、ホールで 64 分音符(BPM 120 で 31.25 ms)、ルームで 128 分音符(約 15.6 ms)にする方法があります。
BPM から LFO の Hz を計算する方法は?
「Hz = 1000 ÷ 音符の長さ(ms)」です。BPM 120 の 4 分音符は 500 ms なので 2 Hz、8 分音符は 4 Hz、16 分音符は 8 Hz です。1 小節で 1 周させたいなら BPM ÷ 240 Hz になります。
リバーブのディケイをテンポに合わせるとどうなりますか?
残響が次の拍やフレーズの直前で消えるので、キックやスネアのアタックが濁らず、リズムがはっきりしたまま空間が広がります。プリディレイとディケイの合計を 2 小節や 1 小節などの音符の長さにそろえるのが一般的です。
トレモロの速さを曲に合わせるには?
曲の BPM を測り、8 分音符や 16 分音符の長さを Hz に直してレートに設定します。BPM 120 なら 8 分で 4 Hz、16 分で 8 Hz、3 連 8 分で 6 Hz です。同期機能がある機材なら音符を選ぶだけで合います。
コンプのリリースはテンポに合わせるべきですか?
ドラムやサイドチェインでは、次のヒットまでに音量が戻りきるよう、8 分音符や 4 分音符より少し短めの長さを目安にすると安定します。ただし入力レベルやアタックでも効き方が変わるので、メーターと耳で最終調整してください。

この記事で紹介したツール

あわせて読みたい

仕組み解説約9分

BPMを変えると何半音変わる?再生速度とDJピッチ%の計算

練習用に曲を遅くする、DJ で 2 曲のテンポをそろえる、ループ素材をプロジェクトの BPM に合わせる。テンポを変える場面はたくさんありますが、そのとき気になるのが「キー(音の高さ)はどれくらい変わるのか」です。この記事では、BPM の変化から再生速度の倍率を出す方法、ピッチも一緒に変わる再生で何半音変わるかの計算式と早見表、DJ のピッチフェーダーの%の求め方、キーを変えずにテンポだけ変える方法との違いまでをまとめます。

記事を読む →
使い方ガイド約10分

曲のBPMの調べ方|タップで正確に測るコツと倍テン・ハーフの見分け方

耳コピ、ダンスの練習、DJ のつなぎ、動画のカット割り、ディレイの設定。どれも最初に必要になるのが曲のテンポ(BPM)です。ところが、曲に合わせて何回かタップしただけでは数字が毎回ずれたり、測った値が倍や半分になっていたりと、思ったより迷います。この記事では、BPM の基本と、タップで測るときに誤差を小さくするコツ、時計で数えて出す方法、DAW やアプリで確かめる方法、倍テン・ハーフテンポの見分け方、ジャンルや速度記号ごとの BPM の目安までをまとめます。

記事を読む →
使い方ガイド約10分

ディレイタイムの計算方法|付点8分のmsとBPM別早見表

ディレイを曲のテンポに合わせると、やまびこが拍の上にきれいに乗って、音が濁らずに広がります。ギターの付点 8 分ディレイ、ボーカルの 8 分・4 分ディレイ、シンセの 3 連符ディレイなど、使う場面は多いのに、BPM から何ミリ秒にすればいいかは毎回迷いがちです。この記事では、ディレイタイムの計算式と、付点・3 連符の求め方、BPM 60〜200 の早見表、付点 8 分ディレイの使い方、テンポ同期がない機材での設定のコツまでをまとめます。

記事を読む →