パンの加水率の計算|牛乳・卵・バター・ルヴァン種の水分を含めた実質加水率
パンの生地の硬さを表すのが加水率です。ところが、牛乳や卵を使ったレシピでは、水の数字だけを見ると加水率がとても低く見えてしまいます。たとえば水35%のバターロールは、牛乳や卵の水分を数えると66%前後になり、水68%の食パンとほとんど変わりません。この記事では、加水率の計算方法と生地の硬さのめやす、牛乳・卵・バターに含まれる水分の割合、それらを含めた「実質加水率」の計算例、ルヴァン種の粉と水の分け方、水を牛乳や卵に置き換えるときの量までを解説します。
加水率とは|水÷粉×100で出す生地の硬さのめやす
加水率は、粉に対してどれだけ水分を入れたかを表す割合です。加水率(%)=水分の量÷粉の量×100で計算し、ベーカーズパーセントで書かれたレシピなら、水の%がそのまま加水率になります。強力粉250gに水170gなら、170÷250×100=68%です。
加水率が高いほど生地はやわらかく、焼き上がりはしっとり・もっちりし、気泡も大きくなります。低いほど生地は硬く、詰まった歯ごたえのある食感になります。一般的なパンのおおよその加水率は次のとおりです。
| パン | 加水率のめやす | 生地の状態 |
|---|---|---|
| ベーグル | 50〜58% | 硬くて扱いやすい。こねるのに力が要る |
| ピザ生地 | 60〜65% | のばしやすい硬さ |
| 食パン・バターロール | 65〜72% | 手ごねしやすい標準的な硬さ |
| バゲット・カンパーニュ | 65〜75% | やわらかめ。ベタつきやすい |
| 高加水パン(チャバタなど) | 75〜85%以上 | 手でまとめにくく、パンチ(折りたたみ)でつなぐ |
同じ加水率でも、粉の種類で硬さの感じ方は変わります。たんぱく質が多い強力粉や、ふすまを含む全粒粉は水をよく吸い、同じ加水率でも硬く感じます。反対に、国産小麦の強力粉はたんぱく質がやや少ないものが多く、同じ加水率でもベタつきやすくなります。レシピの粉を別の銘柄に変えるときは、水を2〜3%残しておき、生地の様子を見ながら足すと失敗しにくくなります。
牛乳・卵・バターに含まれる水分の割合
加水率の「水分」には、水だけでなく、牛乳や卵、バターに含まれる水分も入ります。パン作り 計算では、次の割合で水分を数えています。
| 材料 | 水分の割合(めやす) | 100g入れたときの水分 |
|---|---|---|
| 水 | 100% | 100g |
| 牛乳 | 約88% | 約88g |
| 全卵(殻なし) | 約75% | 約75g |
| バター | 約16% | 約16g |
| ルヴァン種・中種 | 種の加水率で変わる | 加水率100%の種なら50g |
牛乳は大部分が水分ですが、約12%は乳脂肪・たんぱく質・乳糖などの固形分です。全卵は卵白の水分が多く卵黄が少ないので、全体では75%前後になります。バターは8割以上が脂肪で、水分は16%ほどです。はちみつにも20%前後の水分がありますが、ツールでは砂糖と同じく水分を数えていません。はちみつを多く使う生地は、その分少し水を控えるとちょうどよくなります。
実質加水率の計算例|バターロールは水35%でも約66%
強力粉100%・砂糖12%・塩1.6%・イースト2%・全卵15%・牛乳20%・水35%・バター15%のバターロールで計算してみます。
| 材料 | ベーカーズ% | 水分の割合 | 水分として数える量 |
|---|---|---|---|
| 水 | 35% | 100% | 35 |
| 牛乳 | 20% | 約88% | 17.6 |
| 全卵 | 15% | 約75% | 11.25 |
| バター | 15% | 約16% | 2.4 |
| 合計 | — | — | 約66.3% |
水だけを見ると加水率35%で、ベーグルよりずっと硬い生地に見えます。ところが牛乳・卵・バターの水分を足すと実質加水率は約66%になり、水68%の食パン(スキムミルクとバターを含めて約69%)とほぼ同じ硬さだとわかります。レシピを比べるときや、自分でアレンジするときは、水の数字ではなく実質加水率で比べるのがポイントです。
もう一つの例として、牛乳だけで仕込む「水なしの牛乳パン」を考えます。強力粉100%に牛乳70%なら、実質加水率は70×0.88=61.6%です。水70%のつもりで牛乳を同じ量入れると、思ったより硬い生地になるのはこのためです。
ルヴァン種・中種は粉と水に分けて数える
ルヴァン種や中種のように、粉と水を混ぜて発酵させた種を入れる生地では、種の中の粉と水も生地の一部です。種の加水率がわかれば、種1gのうち粉は100÷(100+加水率)、水は加水率÷(100+加水率)に分けられます。加水率100%の種なら、半分が粉、半分が水です。
準強力粉90%・全粒粉10%・ルヴァン種20%(加水率100%)・塩2%・水65%のカンパーニュを、粉300gで作る場合で計算します。ルヴァン種は60gなので、その中に粉30gと水30gが入っています。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 水の材料だけの加水率 | 195÷300×100 | 65% |
| 粉の合計(種の粉を含む) | 300+30 | 330g |
| 水分の合計(種の水を含む) | 195+30 | 225g |
| 実質加水率 | 225÷330×100 | 約68.2% |
| 塩の割合(種の粉を含む粉に対して) | 6÷330×100 | 約1.82% |
種の加水率が変わると、同じ配合でも実質加水率が変わります。この配合で、種の加水率が80%なら約66.5%、125%なら約69.9%、60%(硬めの種)なら約64.4%です。種を硬め・やわらかめに育てている人は、自分の種の加水率で計算すると、レシピどおりの硬さに近づけられます。
水を牛乳・卵に置き換えるときの量
レシピの水を牛乳や卵に置き換えると、風味がよくなり、焼き色もつきやすくなります。ただし、同じ量で置き換えると水分が足りなくなるので、水分が同じになるよう少し多めに入れます。
| 置き換える水の量 | 牛乳にするなら | 全卵にするなら |
|---|---|---|
| 50g | 約57g | 約67g(M玉約1.3個) |
| 100g | 約114g | 約133g(M玉約2.7個) |
| 170g(全部) | 約193g | 約227g(M玉約4.5個) |
- 牛乳の乳脂肪や卵黄の脂肪で、生地はやわらかく、きめが細かくなる
- 乳糖や卵のたんぱく質で焼き色が濃くなるので、全部を置き換えるときは焼き温度を10℃ほど下げると焦げにくい
- 卵を多く入れると生地がベタつきやすい。最初は水の一部だけを置き換えて様子を見る
- 冷たい牛乳や卵をそのまま使うと捏ね上げ温度が下がるので、仕込み水の温度の計算に含めて考える
加水率が高すぎる・低すぎるときの注意
パン作り 計算の配合表では、実質加水率が50%未満のときと85%を超えるときに注意を表示します。どちらも作れないわけではありませんが、ふつうのこね方とは違う工夫が必要になる範囲です。
- 50%未満:ベーグルより硬い生地。手ごねではなかなかまとまらないので、少しずつ水を足すか、パスタマシンやニーダーを使う
- 75〜85%:やわらかくベタつく生地。こね台に打ち粉をしすぎると加水率が下がるので、手を水で濡らして扱う
- 85%超:手でこねてまとめるのは難しい。ボウルの中で混ぜ、30分おきにパンチ(折りたたみ)をしてグルテンをつなぐ作り方が向いている
初めて高加水に挑戦するときは、いつものレシピから水を2〜3%ずつ増やしていくのがおすすめです。一気に10%増やすと、こね方も発酵の見極めも変わって失敗の原因がわかりにくくなります。
加水率を変えるときのコツ|1%は粉250gで2.5g
加水率を1%変えるときに足す・減らす水の量は、粉の量の1%です。粉250gなら2.5g、粉300gなら3gです。小さな差に見えますが、2〜3%変わるだけで生地の手ざわりははっきり変わります。レシピを自分の粉や好みに合わせるときは、次の手順で少しずつ調整すると失敗しにくくなります。
- 1
水を5%ほど残してこね始める
粉250gで水68%(170g)のレシピなら、まず約158g(63%)でこね始めます。残りの約12gは、生地の様子を見ながら足す「調整水」にします。
- 2
グルテンがつながってから残りの水を足す
生地がまとまってから少しずつ水を足す方法をバシナージュといいます。最初から全部の水を入れるより、高加水でもまとまりやすくなります。
- 3
使った水の量を記録して、次回の加水率にする
最終的に足した水を含めて加水率を計算し直し、レシピに書き残します。同じ粉なら次回からは最初からその量で仕込めます。
| こういうとき | 加水率の調整のめやす |
|---|---|
| 粉の銘柄を変えた | 水を2〜3%残してこね始め、生地を見て足す |
| 全粒粉・ライ麦粉の割合を増やした | ふすまが水を吸うので、水を少しずつ増やす |
| 牛乳・卵を増やした | 実質加水率が同じになるよう、水を減らす |
| 生地がベタついて成形しにくい | 次回は水を2%ほど減らす(打ち粉を増やすと加水率が下がるので、増やしすぎない) |
| 焼き上がりがパサつく・硬い | 次回は水を2%ほど増やす |
パン作り 計算で実質加水率を確かめる
パン作り 計算の「ベーカーズ% 配合表」タブで材料を入れるとき、材料ごとに「種類」を水・牛乳・卵・バター・種などから選ぶと、配合表の下に実質加水率が表示されます。種を使うときは種の加水率も入れてください。水を牛乳や卵に置き換える量は、「イースト・計量の換算」タブの「水を牛乳・卵に置き換える量」で出せます。
材料をgに直す方法はベーカーズパーセントの計算方法、その水を何℃で仕込むかは捏ね上げ温度の計算式でくわしく解説しています。
よくある質問
- パンの加水率はどうやって計算しますか?
- 加水率(%)=水分の量÷粉の量×100です。強力粉250gに水170gなら68%です。牛乳や卵が入るときは、牛乳は約88%、全卵は約75%、バターは約16%を水分として足した実質加水率で考えます。
- 実質加水率とは何ですか?
- 水だけでなく、牛乳・卵・バター・種などに含まれる水分も数えて、粉(種の中の粉も含む)で割った加水率です。水35%・牛乳20%・全卵15%・バター15%のバターロールは、実質加水率が約66%になります。
- 牛乳の水分量は何%ですか?
- 牛乳の水分は約88%です。残りの約12%は乳脂肪・たんぱく質・乳糖などです。水の代わりに牛乳を使うときは、水の量÷0.88の牛乳を入れると水分がそろいます。水100gなら牛乳約114gです。
- 卵の水分は何%ですか?
- 全卵(殻なし)の水分は約75%です。Mサイズの卵1個(殻なし約50g)なら、約37.5gが水分です。水の代わりに卵を使うなら、水の量÷0.75の卵が必要で、水50gなら卵約67gです。
- 高加水パンの加水率はどれくらいからですか?
- 一般的に75%前後からが高加水とされ、チャバタなどでは80%を超えることもあります。85%を超えると手でまとめるのは難しく、ボウルの中でパンチ(折りたたみ)をしてグルテンをつなぐ作り方が向いています。
この記事で紹介したツール
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