捏ね上げ温度の計算式|仕込み水の温度を×3で出す方法と生地別の目標温度
同じレシピ・同じ発酵時間で作っているのに、夏はダレて冬はふくらまない。その原因の多くは、こね終わりの生地の温度「捏ね上げ温度」がずれていることです。捏ね上げ温度は、仕込みに使う水の温度でいちばん簡単に合わせられます。この記事では、捏ね上げ温度が仕上がりを左右する理由、食パン・バゲット・カンパーニュなど生地別の目標温度、仕込み水の温度を出す「×3の式」とその成り立ち、手ごね・ニーダー・ホームベーカリーで上がる温度の測り方、ルヴァン種や中種を入れるときの「×4の式」までを、計算例つきで解説します。
捏ね上げ温度とは|1〜2℃のずれで仕上がりが変わる理由
捏ね上げ温度(こねあげおんど)は、生地をこね終えた直後に、生地の中心に温度計を差して測った温度のことです。パン生地の中ではイーストが糖を分解してガスを出し、そのガスで生地がふくらみます。イーストの働きは温度で大きく変わり、一般的に25〜30℃前後でよく働き、それより低いとゆっくり、高すぎると急激に進みます。
レシピに書かれている「一次発酵 50〜60分」といった時間は、決められた捏ね上げ温度でこね上げたことが前提です。捏ね上げ温度が目標より低いと時間どおりにふくらまず、高いと発酵が進みすぎて、酸味やアルコール臭が出たり、生地がダレて形が保てなくなったりします。めやすとして、捏ね上げ温度が1℃違うと、一次発酵にかかる時間は15分前後変わるといわれます。
- 低すぎるとき:一次発酵が終わらない、焼き色が薄い、目が詰まって重い食感になる
- 高すぎるとき:発酵が早く進みすぎる、生地がベタついてダレる、酸っぱいにおいが出る、きめが粗くなる
- ちょうどよいとき:レシピの時間どおりに発酵し、ベンチタイムや成形もしやすい
発酵の時間を毎回調整するより、捏ね上げ温度を目標に合わせるほうがずっと簡単です。そして、捏ね上げ温度を合わせるいちばん手軽な方法が、仕込み水の温度を調整することです。粉や室温は簡単には変えられませんが、水なら冷やすのも温めるのも自由にできます。
生地別の目標の捏ね上げ温度
目標の捏ね上げ温度は、生地の種類と製法で変わります。レシピに書かれていればその温度を使い、書かれていなければ次の表をめやすにしてください。パン作り 計算の「仕込み水の温度」タブでは、生地の種類を選ぶと表の中央の値が目標に入ります。
| 生地の種類 | 目標(ツールの初期値) | 範囲のめやす | 低め・高めにする理由 |
|---|---|---|---|
| 食パン・バターロール | 27℃ | 26〜28℃ | ストレート法の基本の温度 |
| 菓子パン(砂糖が多い生地) | 28℃ | 28〜30℃ | 砂糖が多いとイーストの働きが鈍るので高め |
| フランスパン・バゲット | 24℃ | 23〜25℃ | イーストが少なく、ゆっくり発酵させて風味を出す |
| カンパーニュ(ルヴァン種) | 25℃ | 24〜26℃ | 酵母と乳酸菌のバランスをとる |
| ブリオッシュ(バターが多い生地) | 24℃ | 22〜25℃ | バターが溶け出さないよう低め |
| クロワッサン・デニッシュ | 22℃ | 20〜24℃ | 折り込むバターと温度をそろえる |
| 冷蔵長時間発酵(オーバーナイト) | 23℃ | 22〜24℃ | 冷蔵庫で冷えるまでの間に進みすぎない |
| ピザ生地 | 25℃ | 24〜26℃ | のばしやすさと発酵の速さのバランス |
表の範囲の中でどこを狙うかは、その日の段取りで決めてかまいません。早く焼きたい日は範囲の上のほう、時間に余裕がある日や、ゆっくり発酵させて風味を出したい日は下のほうを狙います。大事なのは「狙った温度に毎回合わせられること」で、そのための道具が次に紹介する計算式です。
仕込み水の温度を出す「×3の式」
家庭のパン作りや製パンの教本でよく使われるのが、次の式です。室温・粉温・水温の3つを足して3で割った平均に、こねている間に上がる温度(摩擦熱など)を足すと、捏ね上げ温度になる、という考え方を逆算したものです。
- 1
目標の捏ね上げ温度を決める
食パンなら27℃のように、生地の種類から決めます。例として、食パンを27℃でこね上げたいとします。
- 2
室温と粉の温度を測る
室温は作業する場所の温度、粉の温度は粉の袋に温度計を差して測ります。例では室温24℃、粉の温度22℃とします。粉が測れないときは室温と同じとして計算します。
- 3
こね方の上昇温度を決める
手ごねなら3℃です。上昇温度を引いた(27−3)=24℃が、こね始めの3つの温度の平均の目標になります。
- 4
式に当てはめる
(27−3)×3−(24+22)=72−46=26℃。この例では26℃の水で仕込めば、こね上がりがおよそ27℃になります。
同じ食パンでも、こね方が変わると水温は大きく変わります。室温24℃・粉温22℃のまま、ニーダーでこねると(27−6)×3−46=17℃、ホームベーカリーでこねると(27−8)×3−46=11℃です。機械でこねるほど摩擦熱が大きいので、水を冷たくしておく必要があります。ホームベーカリーのレシピに「冷水を使う」と書かれていることが多いのはこのためです。
なお、この式は粉・水・室温(ボウルや台の温度)の影響を同じ重さで扱う、簡略化したモデルです。実際には粉と水の比熱や量の違いもありますが、家庭のパン作りで±1℃程度に合わせるには十分な精度があります。ずれる分は、次の「上昇温度」を自分の値に直すことで吸収できます。
上昇温度の求め方|自分のこね方・ホームベーカリーの値を測る
式の中でいちばん個人差が大きいのが上昇温度です。手ごねでも、こねる強さ・時間・台の素材で変わり、ホームベーカリーは機種やコースで大きく違います。教本のめやすを使うより、一度実際に測って自分の値を出しておくと、次からの精度がぐっと上がります。
| こね方 | 上昇温度のめやす | ずれやすい要因 |
|---|---|---|
| 手ごね | 2〜4℃(ツールでは3℃) | こねる時間・力の強さ、台が木か大理石か |
| ニーダー・スタンドミキサー | 5〜8℃(ツールでは6℃) | 回転の速さ、こねる時間、生地の量 |
| ホームベーカリー | 機種で大きく違う(ツールでは8℃) | こねる時間、本体の発熱、季節 |
自分の上昇温度は、上昇温度 = 実際の捏ね上げ温度 −(室温 + 粉温 + 水温)÷ 3 で出せます。たとえば、室温24℃・粉温22℃・水温26℃で手ごねして、こね上がりが29℃だったなら、29−(24+22+26)÷3=29−24=5℃です。この人の手ごねは、めやすの3℃より2℃多く上がることがわかります。次回はこの5℃を使って計算すると、目標どおりにこね上がります。
- 測るのは生地の表面ではなく中心。温度計を生地の真ん中まで差し、数字が止まってから読む
- こね終わってすぐに測る。ボウルに入れて置いておくと室温に近づいてしまう
- 1回だけでなく、季節を変えて2〜3回測ると、自分の平均がわかる
- ホームベーカリーは、こね終わりの合図で一時停止して測る。発酵まで続けるコースでも、こねが終わったタイミングで一度ふたを開ける
ルヴァン種・中種を入れるときは「×4の式」
ルヴァン種・中種・ポーリッシュなど、あらかじめ発酵させた種を生地に混ぜるときは、種の温度も捏ね上げ温度に影響します。そのときは、平均をとる温度が室温・粉温・水温・種温の4つになるので、式の3が4に変わります。
カンパーニュを目標25℃、室温24℃・粉温22℃・手ごね(3℃)で作るとします。種を室温に置いておき種温が24℃なら、(25−3)×4−(24+22+24)=88−70=18℃です。一方、種を冷蔵庫から出したばかりで6℃なら、(25−3)×4−(24+22+6)=88−52=36℃になり、ぬるま湯で仕込む必要があります。種の温度が18℃違うだけで、水温も18℃変わるわけです。
冷蔵庫で保存している種は、使う直前に温度を測る習慣をつけると失敗が減ります。種温を入れずに×3の式で計算してしまうと、冷たい種の分だけ捏ね上げ温度が下がり、発酵が大幅に遅れます。ツールでは「ルヴァン種・中種・ポーリッシュなどの種を入れる」にチェックを入れると×4の式に切り替わり、種の温度の欄が出てきます。
室温・粉温別の仕込み水の温度早見表(手ごね)
手ごね(上昇温度3℃)で、季節ごとの代表的な室温・粉温のときに、仕込み水を何℃にすればよいかをまとめました。0℃を下回る・40℃を超えるところは水だけでは合わせにくい組み合わせです。
| 生地(目標) | 春秋(室温24℃・粉22℃) | 夏(室温30℃・粉28℃) | 冬(室温15℃・粉13℃) |
|---|---|---|---|
| 食パン・バターロール(27℃) | 26℃ | 14℃ | 44℃ |
| 菓子パン(28℃) | 29℃ | 17℃ | 47℃ |
| カンパーニュ・ピザ(25℃) | 20℃ | 8℃ | 38℃ |
| バゲット・ブリオッシュ(24℃) | 17℃ | 5℃ | 35℃ |
| オーバーナイト(23℃) | 14℃ | 2℃ | 32℃ |
| クロワッサン(22℃) | 11℃ | −1℃ | 29℃ |
表を見ると、同じ食パンでも夏は14℃、冬は44℃と、季節によって水温が30℃も違うことがわかります。夏に水道水(25℃前後)をそのまま使えば捏ね上げ温度は高くなりすぎ、冬にぬるま湯を使わなければ低くなりすぎます。夏に氷を何g入れればよいか、冬にお湯を何g混ぜればよいかは、夏・冬の仕込み水の氷とお湯の量の計算でくわしく解説しています。
パン作り 計算で仕込み水の温度を出す
パン作り 計算の「仕込み水の温度」タブで、生地の種類を選び、室温と粉の温度を入れ、こね方を選ぶと、仕込み水の温度がすぐに表示されます。種を入れる生地はチェックを入れて種の温度を入れると×4の式で計算します。仕込み水の量と水道水の温度を入れれば、氷やお湯を何g使うかまで出ます。
こね終わったら、同じタブの「前回の結果から上昇温度を逆算」に実際の捏ね上げ温度と使った水の温度を入れてください。自分のこね方で何℃上がるかが出るので、次からはこね方で「自分で決める」を選んでその値を入れます。配合をg単位に直す方法はベーカーズパーセントの計算方法、牛乳や卵が入る生地の硬さの比べ方は実質加水率の計算を参考にしてください。
よくある質問
- 捏ね上げ温度とは何ですか?
- パン生地をこね終えた直後に、生地の中心で測った温度です。発酵の速さを決める基準になり、食パンなら26〜28℃、バゲットなら23〜25℃のように、生地ごとに目標があります。1℃ずれると一次発酵の時間が15分前後変わるといわれます。
- 仕込み水の温度はどうやって計算しますか?
- 仕込み水の温度=(目標の捏ね上げ温度−上昇温度)×3−(室温+粉温)です。食パンを27℃にしたいとき、室温24℃・粉温22℃・手ごね(上昇3℃)なら、(27−3)×3−(24+22)=26℃の水を使います。
- ホームベーカリーで捏ね上げ温度を合わせるには?
- ホームベーカリーはこねている間に上がる温度が大きく、めやすは8℃前後です。室温24℃・粉温22℃で食パンを27℃にしたいなら、(27−8)×3−46=11℃の冷水を使います。機種で差が大きいので、一度こね終わりの温度を測って上昇温度を逆算すると確実です。
- 上昇温度は何℃にすればよいですか?
- めやすは手ごね2〜4℃、ニーダーやスタンドミキサー5〜8℃です。正確には、上昇温度=実際の捏ね上げ温度−(室温+粉温+水温)÷3で自分の値を出します。室温24℃・粉温22℃・水温26℃で29℃にこね上がったなら、上昇温度は5℃です。
- ルヴァン種を入れるときの仕込み水の温度は?
- 種の温度も入れて、仕込み水の温度=(目標−上昇温度)×4−(室温+粉温+種温)で計算します。目標25℃・室温24℃・粉温22℃・手ごねで、種が24℃なら18℃、冷蔵庫から出したばかりの6℃なら36℃の水です。
この記事で紹介したツール
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