NPFルールと500ルールの違い|星が流れないシャッタースピードの計算
星空を撮ると、シャッターを開けている間に地球が自転して星が線のように伸びてしまいます。何秒までなら点に写るかの目安として「500ルール」が有名ですが、2400万画素を超える今のカメラでは等倍で見ると星が流れて見えます。この記事では、500ルールとNPFルールの計算式、焦点距離・画素数ごとの秒数の早見表、写す方向(赤緯)で秒数がどれだけ延びるかをまとめます。
星が流れるのは地球が自転しているから
夜空の星は、地球の自転によって天の北極(北極星のすぐ近く)を中心に回って見えます。1周にかかる時間は約23時間56分(恒星日)で、1時間あたり約15.04°動きます。1秒あたりにすると約0.0042°とわずかですが、望遠になるほど、また画素が細かいカメラほど、この小さな動きが写真の上で目立つようになります。
星をカメラを固定したまま点に写すには、星の像がセンサー上で動く距離を、目で見て気にならない大きさに収める必要があります。その「何秒まで」の目安を出すのが500ルールとNPFルールです。どちらも三脚に固定して撮る前提の式で、赤道儀やポータブル赤道儀で星を追いかける場合は当てはまりません。
- 焦点距離が長い(望遠)ほど、星の動きが大きく拡大されて速く流れる
- 画素が細かい(高画素)ほど、同じ動きでもまたぐ画素の数が増える
- 天の赤道付近(オリオン座など)の星がいちばん速く動き、北極星に近いほど遅い
- F値を開けるほど星の像が小さく鋭くなり、わずかな流れが目立つ
500ルールの計算式と早見表
500ルールはフィルム時代から使われてきた目安で、2Lや六切くらいのプリントで星が点に見えることを基準にしています。式に画素数が入っていないため、センサーの解像度がどれだけ高くても秒数は同じです。より厳しく見たいときに400ルール・300ルールと定数を小さくする使い方もあります。
| 焦点距離(フルサイズ) | 500ルール | 400ルール | 300ルール |
|---|---|---|---|
| 14mm | 35.7秒 | 28.5秒 | 21.4秒 |
| 16mm | 31.2秒 | 25秒 | 18.7秒 |
| 20mm | 25秒 | 20秒 | 15秒 |
| 24mm | 20.8秒 | 16.6秒 | 12.5秒 |
| 35mm | 14.2秒 | 11.4秒 | 8.5秒 |
| 50mm | 10秒 | 8秒 | 6秒 |
表は写す方向を天の赤道(赤緯0°)とした場合で、星がいちばん速く流れる条件です。フルサイズ2400万画素のカメラで500ルールどおりに撮ると、焦点距離に関係なく星はセンサー上で約6ピクセル動きます。スマホの画面では点に見えても、パソコンで等倍に拡大すると短い線になっているのはこのためです。
NPFルールの計算式
NPFルールは、フランス天文学会のフレデリック・ミショー氏が考案した式で、F値(N)・ピクセルピッチ(p)・焦点距離(f)の3つを使うことから名前が付いています。500ルールと違い、画素の細かさとF値が秒数に反映されます。
SNSやブログでよく見かける「(35×F値+30×ピクセルピッチ)÷焦点距離」は簡易NPFと呼ばれる式です。厳密式より2倍ほど長い秒数になり、等倍では少し流れるものの、縮小して見るなら点に見える程度の目安になります。
| 焦点距離(F2.8・2400万画素) | NPFルール | 簡易NPF | 500ルール |
|---|---|---|---|
| 14mm | 9.3秒 | 19.8秒 | 35.7秒 |
| 16mm | 8.1秒 | 17.3秒 | 31.2秒 |
| 20mm | 6.5秒 | 13.9秒 | 25秒 |
| 24mm | 5.4秒 | 11.5秒 | 20.8秒 |
| 35mm | 3.7秒 | 7.9秒 | 14.2秒 |
| 50mm | 2.6秒 | 5.5秒 | 10秒 |
同じ条件で星がセンサー上を動く量は、NPFルールで約1.6ピクセル、簡易NPFで約3.4ピクセル、500ルールで約6.1ピクセルです。1〜2ピクセルなら等倍で見てもほぼ丸い点、3〜4ピクセルなら等倍でわずかに楕円、6ピクセルを超えるとはっきり線に見えるのが目安です。
高画素のカメラほど秒数が短くなる理由
ピクセルピッチはセンサーの横幅を横方向の画素数で割った値です。フルサイズ(36×24mm)の2400万画素なら横6000画素で約6.0µm、4500万画素なら約4.4µmになります。1画素が小さいほど、星がわずかに動いただけで隣の画素にはみ出すため、点に写せる時間が短くなります。
| 画素数(フルサイズ) | ピクセルピッチ | NPFルール | 500ルールで流れる量 |
|---|---|---|---|
| 1200万画素 | 8.5µm | 13.4秒 | 約4.3ピクセル |
| 2400万画素 | 6.0µm | 10.6秒 | 約6.1ピクセル |
| 3300万画素 | 5.1µm | 9.6秒 | 約7.1ピクセル |
| 4500万画素 | 4.4µm | 8.8秒 | 約8.3ピクセル |
| 6100万画素 | 3.8µm | 8.1秒 | 約9.7ピクセル |
表は14mm F2.8で天の川の中心(いて座、赤緯−29°)を写す場合です。500ルールの秒数は画素数に関係なく約40.8秒ですが、流れる量は6100万画素で約9.7ピクセルまで増えます。高画素機を買ったら星が流れるようになった、と感じるのはこの差です。ただし、写真を縮小して使うなら画素数の影響は小さくなります。6100万画素の写真を2400万画素相当に縮小すれば、流れる量も同じくらいまで縮みます。
写す方向(赤緯)で秒数は延びる
星が動く速さは、天の赤道からどれだけ離れているか(赤緯)によって変わり、cos赤緯に比例します。天の赤道上の星がいちばん速く、北極星のまわりはほとんど動きません。NPFルールも500ルールも、赤緯の補正をかけると次のように秒数が延びます。
| 写す方向 | 赤緯 | NPFルール | 500ルール | 赤道との比 |
|---|---|---|---|---|
| オリオン座・天の赤道 | 0° | 9.3秒 | 35.7秒 | 1倍 |
| 天の川の中心(いて座) | −29° | 10.6秒 | 40.8秒 | 約1.14倍 |
| 夏の大三角 | +30° | 10.7秒 | 41.2秒 | 約1.15倍 |
| 頭の真上(北緯35°) | +35° | 11.4秒 | 43.5秒 | 約1.22倍 |
| 北斗七星 | +55° | 16.2秒 | 約62秒 | 約1.74倍 |
| 北極星のまわり | +80° | 53.8秒 | 約3分26秒 | 約5.8倍 |
表はフルサイズ2400万画素・14mm F2.8の場合です。広角レンズでは画面の中に赤緯の違う星がいくつも入るため、画面の端にある赤道寄りの星から先に流れます。迷ったら赤緯0°で計算しておけば、どの方向でも安全側の秒数になります。
結局どちらを使えばいいか
- パソコンで等倍に拡大して確認する、大きくプリントする → NPFルール
- SNSやスマホの画面で見る、少しの流れより明るさを優先したい → 簡易NPF
- 1200万画素前後の古いカメラ、コンパクトカメラで気軽に撮る → 500ルールでも実用上問題なし
- 星の流れを気にせず地上の明るさを優先したい → 500ルールを上限にして、少し流れるのを許容する
NPFルールの秒数は思ったより短く、そのぶんISO感度を上げる必要があります。14mm F2.8で10秒ならとても暗い空でISO6400前後です。どこまで流れを許すかは、ノイズとのかね合いで決めることになります。天の川を撮るときの設定全体は天の川の撮影設定にまとめています。
- 1
カメラの条件を入れる
星空撮影 計算機の「星が流れない秒数」タブで、センサーサイズと有効画素数、レンズの焦点距離とF値を入れます。APS-Cやマイクロフォーサーズでも、レンズに書かれた焦点距離をそのまま入れれば換算は自動で行われます。
- 2
写す方向を選ぶ
天の川の中心、オリオン座、北斗七星などから選びます。NPFルール・簡易NPF・500ルールの秒数と、その秒数で星が何ピクセル流れるかが並びます。
- 3
カメラで設定できる値を確認する
計算した秒数を超えない1/3段刻みの値(10秒、8秒など)が表示されます。そのままシャッタースピードに設定し、ISOの目安も確認します。
よくある質問
- NPFルールと500ルールはどちらが正しいですか?
- どちらも目安で、見る大きさの前提が違います。500ルールはフィルムや低画素のカメラでプリントを見る前提、NPFルールは高画素のデジタルカメラで等倍に拡大しても点に見える前提です。フルサイズ2400万画素・14mm F2.8なら、500ルールの約35秒では星が約6ピクセル流れ、NPFルールの約9秒なら約1.6ピクセルに収まります。
- NPFルールの計算式を教えてください。
- t=(16.856×F値+0.0997×焦点距離+13.713×ピクセルピッチµm)÷(焦点距離×cos赤緯)です。簡易式は(35×F値+30×ピクセルピッチ)÷焦点距離で、厳密式の2倍ほど長い秒数になります。
- APS-Cで500ルールを使うときは焦点距離をどうしますか?
- 35mm判換算の焦点距離で割ります。ソニー・ニコン・富士フイルムのAPS-Cは約1.53倍なので、16mmなら換算約24.5mmで500÷24.5=約20秒です。天の川の方向なら約23秒まで延びます。
- F値を変えるとNPFルールの秒数が変わるのはなぜですか?
- F値を開けるほど星の像が小さく鋭くなり、わずかな流れも目立つためです。14mm・2400万画素・天の川の方向では、F1.4で約8.7秒、F2.8で約10.6秒、F4で約12.3秒になります。ただしF値を絞ると暗くなるので、多くの場合は開放付近で使います。
- 星が流れているかどうかはどう確かめますか?
- 撮影した画像を再生して、画面の端にある明るい星を最大まで拡大します。丸い点なら問題なく、細長い楕円や短い線になっていれば秒数を短くします。広角レンズでは中央より端の星のほうが流れやすく、レンズの収差でも形が崩れるので、四隅も確認してください。
この記事で紹介したツール
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