繰り上げ返済の効果|期間短縮型と返済額軽減型はどちらが得か
手元に100万円あるとき、それを繰り上げ返済に回すと利息はいくら減るのでしょうか。答えは金利・残りの期間・実行する時期で変わり、さらに期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選ぶかで倍以上の差がつきます。この記事では、同じ条件で計算した金額を並べて、判断の材料を整理します。
繰り上げ返済で利息が減る理由
通常の返済では、支払ったお金はまず利息に充てられ、残りが元金の返済に回ります。これに対して繰り上げ返済は、支払った額の全額が元金に充てられます。
利息は「そのときの残高 × 年利 ÷ 12」で決まるので、元金が100万円減れば、それ以降の毎月の利息も100万円ぶん軽くなります。完済までの残り期間が長いほど、この軽くなった状態が長く続くため、効果は大きくなります。繰り上げ返済で得られるのは、この「払わずに済んだ利息」です。
期間短縮型と返済額軽減型の違い
繰り上げ返済で浮いた元金ぶんを、期間の短縮に使うか毎月の返済額の引き下げに使うかで2つの型に分かれます。3000万円・35年・年1.0%のローンで、5年後に100万円を繰り上げ返済した場合を比べます。
| 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
|---|---|---|
| 減る利息 | 34万1,356円 | 15万7,926円 |
| 完済までの期間 | 1年3か月短縮 | 変わらない |
| 毎月の返済額 | 84,685円のまま | 81,469円(3,216円減) |
| 向いている状況 | 総額を抑えたい | 毎月の家計に余裕を作りたい |
同じ100万円でも、期間短縮型のほうが2倍以上の利息を減らせます。返済額軽減型は残りの期間を変えずに毎月の額を下げ直す仕組みのため、残高が減った効果の一部が「支払いを楽にする」ほうに使われるからです。
ただし、教育費が重なる時期や収入が下がる見込みがある時期には、毎月3,216円でも固定費が下がることに意味があります。総額で選ぶなら期間短縮型、月々のキャッシュフローで選ぶなら返済額軽減型、と役割が違うものだと考えてください。
早いほど効くが、差は思ったほど極端ではない
同じ100万円を、実行する時期だけ変えて比べたものです(3000万円・35年・年1.0%、期間短縮型)。
| 実行する時期 | 減る利息 | 短縮される期間 |
|---|---|---|
| 1年後 | 39万5,706円 | 1年4か月 |
| 3年後 | 36万8,265円 | 1年4か月 |
| 5年後 | 34万1,356円 | 1年3か月 |
| 10年後 | 27万6,373円 | 1年3か月 |
| 15年後 | 21万4,517円 | 1年2か月 |
| 20年後 | 15万5,639円 | 1年1か月 |
1年後と20年後では効果が2.5倍違います。「繰り上げ返済は早いほうがよい」と言われるとおりですが、1年後に実行する代わりに5年後にしたときの差は5万4000円ほどです。貯蓄を切り崩してまで急ぐより、生活防衛資金を確保してから実行するほうが安全と言えます。
金額を増やしたときの効果も見ておきます。5年後に実行した場合、200万円なら66万5,243円(2年7か月短縮)、300万円なら97万2,123円(3年10か月短縮)、500万円なら153万6,523円(6年5か月短縮)の利息が減ります。おおむね金額に比例します。
金利が高いローンほど効果が大きい
繰り上げ返済で減るのは利息なので、金利が高いローンほど効きます。同じ「5年後に100万円・期間短縮型」でも、金利によって効果はこれだけ変わります。
| 金利 | 減る利息 | 短縮される期間 |
|---|---|---|
| 年0.5% | 15万8,439円 | 1年2か月 |
| 年1.0% | 34万1,356円 | 1年3か月 |
| 年1.8% | 69万4,050円 | 1年5か月 |
複数の借入がある場合は、金利の高いものから繰り上げ返済するのが基本です。住宅ローンが0.5%、自動車ローンが3.5%という状態なら、同じ100万円は自動車ローンに充てたほうが減る利息は大きくなります。金利水準そのものの影響は金利の違いと総返済額でも扱っています。
実行する前に確認したいこと
- 手数料:ネット手続きなら無料の金融機関が多い一方、窓口では1回あたり数千円から数万円かかることがあります。減る利息と比べて判断してください。
- 最低金額:1万円から受け付けるところもあれば、100万円単位でしか受け付けないところもあります。
- 住宅ローン控除:年末残高の0.7%が所得税から控除される期間中は、残高を減らすと控除額も減ります。控除期間が終わってから実行したほうが有利になる場合があります。
- 生活防衛資金:繰り上げ返済したお金は引き出せません。生活費の6か月から1年ぶんは手元に残してください。
- 団体信用生命保険:住宅ローンには団信が付いていることが多く、返済を急ぐと保障が早く終わります。金利が低い場合は、繰り上げ返済より運用や貯蓄を優先する考え方もあります。
特に住宅ローン控除の期間中は、金利が控除率(0.7%)より低いと、繰り上げ返済で減る利息より控除の減少額のほうが大きくなることがあります。自分の金利がどちら側なのかは、計算してみないと分かりません。
ツールで効果を確かめる
ローン返済シミュレーターの「繰上返済の効果」タブでは、同じ条件で期間短縮型と返済額軽減型を並べて計算します。
- 1
借入条件を入れる
借入額・金利・返済期間を入力します。「返済額を計算」タブと同じ条件がそのまま使われるので、入れ直す必要はありません。
- 2
繰り上げ返済する額と時期を入れる
金額は「100万」のような書き方で入力できます。時期は返済開始から何年後かを年単位で指定します。
- 3
2つの型を見比べる
期間短縮型と返済額軽減型それぞれについて、減る利息・短縮される期間・軽減後の毎月の返済額が表示されます。
- 4
実行時期を比べる
1年後・3年後・5年後・10年後・15年後・20年後に実行した場合の比較表も出るので、「いつやるか」の判断に使えます。
繰り上げ返済後の返済予定表も確認できます。返済額そのものの計算の仕組みはローン返済額の計算方法、方式ごとの違いは元利均等返済と元金均等返済の違いにまとめています。
よくある質問
- 100万円を繰り上げ返済すると利息はいくら減りますか?
- 3000万円・35年・年1.0%のローンで5年後に実行した場合、期間短縮型なら34万1,356円の利息が減り、完済が1年3か月早まります。返済額軽減型なら減る利息は15万7,926円で、毎月の返済額が84,685円から81,469円に下がります。金利が1.8%なら期間短縮型で69万4,050円と、効果は金利に大きく左右されます。
- 期間短縮型と返済額軽減型はどちらが得ですか?
- 減る利息だけで比べれば期間短縮型です。上記の条件では2倍以上の差がつきます。ただし返済額軽減型には毎月の支払いが下がるという効果があり、収入が減る時期や教育費が重なる時期に家計を守る役割を果たします。総額を優先するか月々の余裕を優先するかで選んでください。
- 繰り上げ返済は早いほうが得ですか?
- 同じ金額なら早いほど効果は大きくなります。3000万円・35年・1.0%で100万円を返す場合、1年後なら39万5,706円、20年後なら15万5,639円の利息が減り、2.5倍の差があります。ただし1年待つごとに減るのは数万円程度です。手元資金を使い切って急ぐより、生活防衛資金を確保したうえで実行するほうが安全です。
- 住宅ローン控除がある間は繰り上げ返済しないほうがよいですか?
- 金利によります。控除は年末残高の0.7%が所得税などから引かれる仕組みなので、借入金利が0.7%を下回るなら、繰り上げ返済で減る利息より控除の減少額のほうが大きくなることがあります。金利が1%を超えていれば、控除期間中でも繰り上げ返済が有利になるのが一般的です。控除の残り年数と金利を確認して判断してください。
- 毎年少しずつ繰り上げ返済するのと、まとめて返すのはどちらがよいですか?
- 同じ総額なら、早く元金を減らせるぶん毎年少しずつのほうが有利です。ただし手数料が1回ごとにかかる場合は、回数が増えるほどその負担が積み上がります。手数料無料でネット手続きできる金融機関なら小刻みに、有料ならまとめて、という使い分けが現実的です。
この記事で紹介したツール
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