使い方ガイド公開日 読了目安 約7

15分単位の切り捨ては違法?勤怠の丸めルールと正しい端数処理

9:05に出勤したのに9:15開始として記録される、18:50に退勤したのに18:45で締められる。この「15分単位の丸め」は多くの職場で当たり前のように行われていますが、労働基準法の原則からすると認められない処理です。この記事では、どこまでが許されてどこからが違法なのか、月の合計に許された唯一の例外、実際にどれだけの時間が失われるのかを整理します。

原則は1分単位——賃金の全額払い

労働基準法24条は、賃金を全額支払わなければならないと定めています。5分働いたなら5分ぶんの賃金が発生し、それを切り捨てるのは賃金の一部を支払わないことと同じです。そのため労働時間は原則として1分単位で記録・計算します。

  • 日ごとに15分未満を切り捨てる:違法です。
  • 日ごとに30分未満の残業を切り捨てる:違法です。
  • 1分単位で記録し、そのまま計算する:原則どおりで問題ありません。
  • 労働者に有利な方向(切り上げ)に丸める:賃金が減らないため問題になりません。

「15分単位は昔からの慣行」「タイムカードのシステムがそうなっている」という説明は、法律上の根拠にはなりません。厚生労働省の労働時間適正把握ガイドラインでも、始業・終業時刻を客観的な記録で確認することが求められています。

例外として認められる端数処理は1つだけ

例外として、行政通達(昭和63年3月14日 基発150号)により、事務簡便を目的とした次の処理が認められています。ポイントは「1か月の合計に対して」行うことです。

対象認められる処理
1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働の各合計1時間未満の端数のうち、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる
1時間あたりの賃金額・割増賃金額の円未満の端数50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる
1か月の賃金支払額の円未満の端数50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる

つまり、月の時間外労働の合計が23時間20分なら23時間に、23時間40分なら24時間にできます。切り捨てと切り上げが両方あるため、長い目で見れば労働者に不利になりにくいという考え方です。日ごとの切り捨てが認められないのは、切り捨てだけが一方的に繰り返され、必ず労働者の不利益になるからです。

丸めで失われる時間を計算してみる

15分単位の切り捨ては、1日あたりで見ると小さく感じます。しかし月・年で積み上げると無視できない金額になります。出勤・退勤の両方で切り捨てられる場合、1日あたり最大で28分(両端で14分ずつ)が消えます。

1日あたりの切り捨て月20日年間基礎時給1,700円・1.25倍での年間金額
5分1時間40分20時間約42,500円
10分3時間20分40時間約85,000円
15分5時間60時間約127,500円
28分9時間20分112時間約238,000円

金額は「基礎時給 × 1.25 × 年間時間」で計算した目安です。切り捨てられている時間が所定内であれば1.0倍、深夜に重なっていれば1.5倍になるため、実際の差額は状況で変わります。

なお、未払い賃金を請求できる時効は現在3年です(2020年4月以降に発生した賃金について、当面の間3年とされています)。過去にさかのぼって請求する場合も、まずは客観的な記録が必要です。

職場でのおさまりどころ

「1分単位で記録する」と決めても、始業前に到着した時間まで労働時間に数えると別の問題が起きます。実務では次のような整理がよく使われます。

  • 始業時刻より前の打刻は、始業時刻から数える(早く来ただけで働いていないため)。ただし業務の指示があれば労働時間です。
  • 終業後の打刻は、実際に業務が終わった時刻で数える。残業の許可制を取る場合は、許可のない残業を黙認しない運用とセットにする。
  • システムの制約で15分単位でしか登録できない場合は、切り上げ方向に統一する。
  • 月の合計に対してのみ、30分未満切り捨て・30分以上切り上げの端数処理を使う。
  1. 1

    自分の記録を1分単位で残す

    PCのログオン・ログオフ時刻、入退館記録、業務チャットの最初と最後の発言時刻など、客観的に残るものが有効です。手帳のメモでも、毎日継続して付けていれば証拠になり得ます。

  2. 2

    給与明細と突き合わせる

    自分の記録から計算した実働時間・残業時間と、明細に記載された時間数を並べます。毎月同じ方向にずれていれば、丸めが行われている可能性が高いです。

  3. 3

    差が続くなら記録を持って相談する

    まずは勤怠の担当部署へ。解決しない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーが無料で相談を受け付けています。

丸めのあり・なしを並べて比べる

勤務時間の計算ツールには、丸めの単位(1分・5分・10分・15分・30分・60分)と方向(切り捨て・四捨五入・切り上げ)を切り替える機能があります。同じ勤務データで単位だけを変えれば、丸めによって何分が消えているかがそのまま分かります。

  1. 1

    まず1分単位で計算する

    実際の出勤・退勤・休憩を入れて、丸めなしの実働時間を出します。これが本来の労働時間です。

  2. 2

    会社と同じ丸め設定に変える

    15分・切り捨てに切り替えると、丸め後の実働時間と、元の時間との差が表示されます。

  3. 3

    1か月ぶんで比べる

    「1か月の集計」タブに月のデータを貼り付ければ、月合計での差が分かります。月合計に対する30分単位の端数処理も、オン・オフを切り替えて比較できます。

  4. 4

    金額に直す

    時給を入力すると、割増を含めた金額の差として表示されます。話し合いに持っていくときは、時間より金額のほうが伝わります。

端数処理の考え方は消費税の計算とも似ています。四捨五入・切り捨ての選択が積み上がると金額が変わる構造はインボイスの端数処理でも扱っています。日々の時間の使い方を記録する方法は時間記録の振り返りが参考になります。

よくある質問

15分単位の切り捨ては違法ですか?
日ごとに行う切り捨ては違法です。労働基準法24条の賃金全額払いの原則により、働いた時間は1分単位で計算するのが原則で、5分でも10分でも切り捨てれば賃金の未払いになります。例外として認められているのは、1か月の時間外・休日・深夜労働の各合計に対して、30分未満を切り捨て30分以上を1時間に切り上げる処理だけです。
30分未満の残業は切り捨ててよいと聞きましたが本当ですか?
1か月の合計に対してのみ認められています。行政通達(昭和63年3月14日 基発150号)は、事務の簡便のため1か月の時間外労働の合計に1時間未満の端数があるとき、30分未満を切り捨て30分以上を1時間に切り上げる処理を認めています。日ごとに「今日は20分の残業だから切り捨て」とするのは、この通達の範囲外で違法です。
切り上げの丸めなら問題ありませんか?
賃金が減らないため、労働基準法24条の問題にはなりません。15分単位で切り上げる運用は、実際の労働時間より多く支払うことになるので適法です。ただし、労働時間そのものの把握は正確に行う必要があり、36協定の上限管理や健康管理の観点では実際の時間を記録しておくことが求められます。
丸めで1日15分失われると、年間でどれくらいになりますか?
月20日勤務なら月5時間、年間60時間です。基礎時給1,700円・1.25倍で計算すると年間で約12万7,500円になります。出勤と退勤の両方で切り捨てられていると1日あたり最大28分になり、年間112時間、約23万8,000円相当です。未払い賃金の請求権の時効は現在3年なので、さかのぼって請求できる場合もあります。
丸められているか確認するにはどうすればいいですか?
自分で1分単位の記録を残し、給与明細の時間数と突き合わせます。PCのログオン・ログオフ時刻、入退館記録、業務チャットの発言時刻などは客観的な記録として有効です。毎月同じ方向にずれているなら丸めが行われています。勤務時間の計算ツールで丸め単位を1分と15分で切り替えれば、差が何分・いくらになるかをそのまま確認できます。

この記事で紹介したツール

あわせて読みたい

使い方ガイド7

休憩時間は45分か1時間か|労働基準法34条の3原則と実働6時間の境目

「6時間ちょうどの勤務なら休憩はいらない」「8時間を超えたら1時間」。休憩のルールは数字だけを覚えると必ず境目で迷います。この記事では、労働基準法34条が定める休憩時間の基準と「超える」の意味、途中付与・一斉付与・自由利用の3原則、残業で8時間を超えたときに追加で必要になる15分の扱いまでを整理します。

記事を読む →
使い方ガイド7

勤務時間の計算方法|実働時間・休憩・残業の出し方と60進法のコツ

9:00から18:00まで働いて休憩1時間なら実働8時間。ここまでは暗算できても、出勤が8:45、退勤が19:20、休憩が45分と中途半端になると途端に間違えます。この記事では、実働時間の出し方と60進法でつまずかないコツ、所定労働時間と法定労働時間の違い、そこから残業時間がどう決まるのかを順番に整理します。

記事を読む →
使い方ガイド7

深夜手当は何時から?22時〜5時の割増と夜勤の勤務時間の数え方

「22時を過ぎたら給料が上がる」とは聞くものの、何時までなのか、残業と重なったらどうなるのか、日をまたぐ夜勤はどちらの日の労働として数えるのか。この記事では、深夜割増の時間帯と割増率の重なり方、22時出勤・翌6時退勤のようなシフトの数え方、休憩が深夜にかかる場合の扱いを具体例で整理します。

記事を読む →