コースタイムの計算方法|距離と標高差から歩く時間を見積もる
登山地図に載っていないルートや、自分でつないだコースを歩くとき、「何時間かかるか」がわからないと水や行動食の量も下山時刻も決められません。この記事では、距離と上り・下りの標高差からコースタイムを見積もるドイツの規格 DIN 33466 の計算方法、具体的なコース例での計算、登山地図のコースタイムとの付き合い方、自分のペースの倍率の出し方、休憩を含めた行動計画の立て方を解説します。
コースタイムとは「休憩を除いた標準の歩く時間」
コースタイムは、登山地図やガイドブックに書かれている、ある区間を歩くのにかかる標準的な時間です。多くの場合、休憩や食事の時間は含みません。山頂で30分休み、途中で何度か10分休憩をとれば、実際の行動時間はコースタイムよりかなり長くなります。
コースタイムは、水の量・行動食の量・下山時刻を決める基準になります。水の量は「体重×歩く時間×5」、消費エネルギーは「ルート定数×(体重+ザックの重さ)」で計算しますが、どちらにもコースタイムが入るからです(水の量の記事・ルート定数の記事)。
DIN 33466 でコースタイムを見積もる
登山地図にコースタイムが載っていないときは、距離と累積標高差から見積もれます。よく使われるのが、ドイツの規格 DIN 33466 の方法です。水平方向と上下方向の時間をそれぞれ出し、合わせ方に工夫があります。
- 1
水平方向の時間を出す
距離(km)÷ 4。平らな道を時速4kmで歩くと考えます。
- 2
上下方向の時間を出す
上りの累積標高差(m)÷ 300 + 下りの累積標高差(m)÷ 500。上りは1時間に300m、下りは1時間に500m進むと考えます。
- 3
短いほうの半分を、長いほうに足す
水平と上下の時間のうち、長いほうをそのまま使い、短いほうは半分だけ足します。登りながら前にも進んでいるので、単純に足すと長くなりすぎるためです。
コース例で計算してみる
| 距離・標高差 | 水平の時間 | 上下の時間 | コースタイムの見積もり |
|---|---|---|---|
| 7km・上り450m・下り450m | 1.75時間 | 2.40時間 | 約3時間17分 |
| 8km・上り800m・下り800m | 2.00時間 | 4.27時間 | 約5時間16分 |
| 10km・上り1,000m・下り1,000m | 2.50時間 | 5.33時間 | 約6時間35分 |
| 16km・上り1,600m・下り1,600m | 4.00時間 | 8.53時間 | 約10時間32分 |
| 5km・上り900m(下りはロープウェイ) | 1.25時間 | 3.00時間 | 約3時間38分 |
| 12km・上り300m・下り300m | 3.00時間 | 1.60時間 | 約3時間48分 |
| 20km・上り500m・下り500m | 5.00時間 | 2.67時間 | 約6時間20分 |
標高差の大きいコースでは上下の時間が長いほうになり、距離はあまり効きません。逆に、なだらかな長い道では水平の時間が長いほうになり、標高差は半分しか効きません。
DIN 33466 の上りの速さ(1時間に300m)は控えめな設定なので、標高差の大きいコースでは、日本の登山地図のコースタイムより長く出ることがあります。たとえば「10km・上下1,000m」のコースが登山地図で5時間となっていれば、DINの見積もり(約6時間35分)より1時間半ほど短くなります。登山地図のコースタイムがあるときはそちらを使い、DINの見積もりは「地図にないコースの目安」や「余裕をもった計画」に使うのがおすすめです。
自分のペースの倍率を知っておく
コースタイムはあくまで標準の時間なので、人によって速くも遅くもなります。自分がコースタイムの何倍で歩くかを知っておくと、計画の精度が上がります。
- 自分のペースの倍率 = 実際に歩いた時間(休憩を除く)÷ コースタイム
- 例:コースタイム4時間の区間を、休憩を除いて4時間48分(4.8時間)で歩いた → 4.8÷4=1.2倍
- スマホの登山アプリの記録を使うと、休憩を除いた歩行時間を確かめやすい
- 初心者・子ども連れ・荷物が重い日は、1.2〜1.5倍で計画すると無理がない
| ペース | コースタイム5時間の場合の歩く時間 |
|---|---|
| 速い(0.8倍) | 4時間 |
| コースタイムどおり(1倍) | 5時間 |
| ゆっくり(1.2倍) | 6時間 |
| かなりゆっくり(1.5倍) | 7時間30分 |
ペースが遅いと歩く時間が長くなるので、必要な水の量も増えます。体重60kgの人が1.5倍のペースで歩くと、歩く時間は7時間30分になり、脱水量はコースタイムどおりのときの1.5倍(約2,250ml)です。
休憩を含めた行動計画と下山時刻の決め方
- 1
歩く時間を出す
コースタイム(またはDINの見積もり)に自分のペースの倍率を掛けます。
- 2
休憩の時間を足す
1時間に1回10分の休憩と、山頂での30〜60分を足します。5時間歩くなら、休憩だけで1時間〜1時間半ほどになります。
- 3
下山時刻から逆算して出発時刻を決める
山では午後になると天気が崩れやすく、日没後の行動は危険です。遅くとも15時ごろまでに下山できるように出発時刻を決めます。
- 4
引き返す時刻を決めておく
「この時刻までに山頂に着かなければ引き返す」という時刻を決めておくと、判断に迷いません。
登山の水分・行動食計算ツールでは、距離と標高差からDIN 33466のコースタイムを見積もり、自分のペースを選ぶと歩く時間・水の量・休憩ごとの補給量まで一度に計算できます。休憩ごとの補給の考え方は行動食の記事で解説しています。
よくある質問
- コースタイムに休憩は含まれますか?
- 多くの登山地図では、コースタイムに休憩や食事の時間は含まれていません。実際の行動時間は、コースタイムに休憩の時間を足して計画してください。
- 距離と標高差だけでコースタイムを計算できますか?
- DIN 33466の方法で見積もれます。距離÷4で水平の時間、上りの標高差÷300+下りの標高差÷500で上下の時間を出し、長いほうに短いほうの半分を足します。10km・上下1,000mなら約6時間35分です。
- DINの見積もりと登山地図のコースタイムが違うのはなぜですか?
- 想定している歩く速さが違うためです。DIN 33466は上りを1時間に300mと控えめに見ているので、標高差の大きいコースでは登山地図より長く出ることがあります。登山地図のコースタイムがあるときはそちらを優先してください。
- コースタイムより遅いと危険ですか?
- 遅いこと自体は問題ありませんが、計画より大幅に遅れると下山が日没に近づき危険です。自分のペースの倍率を知り、最初からその時間で計画しておきましょう。予定より遅れているときは、引き返す判断も大切です。
- 累積標高差はどこで調べられますか?
- 登山地図アプリやGPSアプリのコース情報、登山ガイドのウェブサイトなどに「累積標高(上り・下り)」として載っていることが多いです。登山口と山頂の標高差ではなく、途中のアップダウンを足した値を使ってください。
この記事で紹介したツール
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