モールス信号の覚え方と聞き取り練習|コッホ法・Farnsworth・速さの目安
モールス信号を符号表で覚えたのに、音で聞くと全然わからない、というのはよくあることです。この記事では、表で覚えると聞き取れなくなる理由、速さの単位 WPM と短点の長さの関係、文字の間だけを延ばす Farnsworth 方式、2文字から1文字ずつ増やすコッホ法の手順、和文の覚える順番、電鍵での打鍵練習、アマチュア無線でモールス通信をするための資格までをまとめます。
符号表で覚えると聞き取れなくなる理由
モールス信号を覚えようとして、まず「A=・-、B=-・・・」と表を暗記する人は多いでしょう。ところが、この覚え方だと音を聞いたときに「短い、長い、だからA」と頭の中で点と線を数えて表を引く手順が入り、ゆっくりな音なら読めても、少し速くなると追いつけなくなります。
聞き取れる人は、点と線を数えていません。「ト・ツー」というリズムのかたまりを、そのまま A という文字として聞いています。言葉を聞くときに一つひとつの音を分解しないのと同じです。ですから、耳で使うつもりなら、最初から音のリズムで文字を覚えるのが近道です。表で覚えた知識は、符号を目で読むときや、メッセージを作るときにはそのまま役立ちます。
速さの単位 WPM と、短点の長さ早見表
モールス信号の速さは WPM(words per minute、1分間に送る語数)で表します。基準になる語は「PARIS」で、文字の間や語の間も含めて短点50個分の長さがあります。1分間に PARIS を何回送れる速さか、が WPM です。そのため、短点1つの長さは「1.2÷WPM 秒」で求められます。
| WPM | 短点の長さ | 長点の長さ | 1分あたりの文字数の目安 | 感覚 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 240ミリ秒 | 720ミリ秒 | 約25字 | 符号を数えながらでも追える |
| 10 | 120ミリ秒 | 360ミリ秒 | 約50字 | ゆっくりした交信 |
| 15 | 80ミリ秒 | 240ミリ秒 | 約75字 | 標準的な交信の速さ |
| 20 | 60ミリ秒 | 180ミリ秒 | 約100字 | 数えると追いつけない。リズムで聞く速さ |
| 25 | 48ミリ秒 | 144ミリ秒 | 約125字 | 慣れた人どうしの交信 |
1分あたりの文字数は、英語の平均的な単語を5文字として WPM×5 で出した目安です。キーボードのタイピング速度も同じ WPM という単位で表すことがあるので、比べてみるのも面白いでしょう。タイピングの速さの目安はタイピング速度の目安で紹介しています。
Farnsworth 方式:符号は速く、間だけゆっくり
初心者向けに5WPM で練習すると、短点が240ミリ秒と長く、1つの文字が「トン、ツー」と間延びした音になります。これでは点と線を数える癖がつき、速くしたときに文字の聞こえ方が変わってしまいます。
そこで使われるのが Farnsworth(ファーンズワース)方式です。1つひとつの文字の符号は18〜20WPM の速さで送り、文字と文字の間、単語と単語の間だけを長くして、全体の速さを5〜10WPM に落とします。文字のリズムは本番と同じまま、考える時間だけが増えるしくみです。
| 符号の速さ | 全体の速さ | 短点 | 文字の間 | 単語の間 |
|---|---|---|---|---|
| 18WPM | 18WPM(標準) | 67ミリ秒 | 200ミリ秒 | 467ミリ秒 |
| 18WPM | 10WPM | 67ミリ秒 | 621ミリ秒 | 1.45秒 |
| 18WPM | 5WPM | 67ミリ秒 | 1.57秒 | 3.66秒 |
| 20WPM | 10WPM | 60ミリ秒 | 654ミリ秒 | 1.53秒 |
慣れてきたら、符号の速さはそのままで全体の速さを少しずつ上げ、最後に両方を同じにします。符号の速さを途中で変えないことが、聞き取り直しを防ぐコツです。
コッホ法の練習手順|2文字から1文字ずつ増やす
コッホ法は、ドイツの心理学者ルートヴィヒ・コッホが考えた聞き取りの覚え方です。最初から実際に使う速さで、たった2文字だけを聞き分けるところから始め、正答率が90%を超えたら1文字増やす、という手順を繰り返します。
- 1
速さを決める
符号の速さは15〜20WPM にします。最初はつらく感じますが、2文字しかないので聞き分けられます。全体の速さは Farnsworth 方式で遅くしてもかまいません。
- 2
2文字だけで練習する
欧文なら K と M から始めるのが一般的です。ランダムに流れる K と M を聞き、すぐに答えます。考え込まず、わからなければ飛ばします。
- 3
正答率90%で1文字増やす
ある程度の数を答えて正答率が90%を超えたら、次の文字を足します。欧文はK・M・U・R・E・S・N・A・P・T・L・W・I…の順に足していくのが定番です。
- 4
1日10〜15分を毎日
長時間まとめて練習するより、短い時間を毎日続けるほうが耳に残ります。疲れて正答率が落ちてきたら、その日は終わりにします。
和文モールスでも同じやり方ができます。和文は符号の短い文字から増やすと覚えやすく、ヘ・ム・イ・ヨ・タ・ホ・リ・ワ・レ・ナ・ラ・ウ・ヤ…と、1〜2個、3個、4個、5個の符号の順に進めます。文字の一覧は和文モールス符号の五十音一覧にあります。
電鍵で打つ練習:長点は短点の3倍
聞き取りに慣れてきたら、送る(打つ)練習も始めます。モールス信号を送る道具を電鍵(キー)と呼び、上下に押す縦振れ電鍵(ストレートキー)と、左右に振ると短点・長点が自動で出るパドル(エレクトロニック・キーヤーと組み合わせて使う)があります。
- 長点は短点の3倍、符号の中の間は短点1つ分、文字の間は3つ分、単語の間は7つ分が基準です。
- 最初は長点が短くなりがちです。「ツー」をはっきり長く打つことを意識します。
- 文字の間を詰めすぎると、2文字が1文字につながって別の文字に読まれます(E と T を続けると A に聞こえるなど)。
- 打った符号を自分で聞き直すか、解読させて確かめると、癖に気づけます。
アマチュア無線でモールス通信(CW)をするには
日本でアマチュア無線のモールス通信(電信、CW)を行うには、第三級アマチュア無線技士以上の資格が必要です。第四級アマチュア無線技士では、モールス符号による通信はできません。第三級の国家試験では法規の中でモールス符号の知識が問われますが、音を聞き取ったり送ったりする実技の試験はありません。
資格を取っただけでは交信の速さについていけないので、多くの人は資格の勉強と並行して聞き取りの練習を始めます。実際の交信では「CQ」「DE」「599」「73」のような略語が多く使われるので、略符号とQ符号の意味も覚えておくと、交信の流れがつかみやすくなります。無線局の免許で使える電波の型式や周波数は、総務省の電波利用ホームページなどで確認してください。
ブラウザでコッホ法と打鍵の練習をする
モールス信号 変換・練習ツールの「聞き取り練習」タブは、2文字から始めて、20問以上答えて正答率が90%を超えると1文字ずつ増やせるコッホ法の練習です。欧文は K・M・U・R・E・S… の順、和文は符号の短い順に文字が増え、間違えた文字や新しく増えた文字が多めに出題されます。符号の速さは5〜40WPM、全体の速さ(Farnsworth)、音の高さ(400〜1000Hz)を変えられます。
「電鍵で打つ」タブでは、画面の電鍵(パソコンはスペースキー)を押した長さで短点・長点を判定し、打った符号を文字に解読します。打つ速さに合わせて判定の基準を調整するので、自分の打鍵がどれくらいの WPM になっているかもわかります。耳が高い音を聞き取りにくいと感じたら、音の高さを下げてみてください。年代による聞こえ方の違いは年代別の聞こえる周波数の早見表も参考になります。
よくある質問
- モールス信号を早く覚えるコツは?
- 表で点と線を覚えるより、最初から実際の速さの音を聞き、リズムのかたまりで文字を覚えることです。2文字から始めて正答率90%で1文字ずつ増やすコッホ法を、1日10〜15分ずつ毎日続けるのが効果的です。
- コッホ法とは何ですか?
- ドイツの心理学者ルートヴィヒ・コッホが考えた聞き取りの覚え方で、最初から15〜20WPMの速さで2文字だけを聞き分け、正答率が90%を超えたら1文字ずつ増やしていく方法です。遅い速さで覚えた後に速くして聞き取り直す手間を防げます。
- Farnsworth 方式とは何ですか?
- 1つひとつの文字の符号は18〜20WPMの速さで送り、文字と単語の間だけを延ばして全体の速さを落とす練習方法です。文字のリズムは本番と同じまま、考える時間を確保できます。
- モールス信号の WPM とは?
- 1分間に「PARIS」(短点50個分の長さ)を何回送れるかで表した速さです。短点の長さは 1.2÷WPM 秒で、15WPM なら80ミリ秒、20WPM なら60ミリ秒です。
- モールス通信をするにはアマチュア無線の何級が必要ですか?
- 第三級アマチュア無線技士以上が必要です。第四級ではモールス符号による通信はできません。第三級の試験ではモールス符号の知識が筆記で問われますが、聞き取りや送信の実技試験はありません。
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