ふるさと納税の上限額の計算方法|住民税の所得割から控除上限を出す式
ふるさと納税の上限額は「年収の何%」といった単純な割合ではなく、住民税の所得割額から決まります。この記事では、控除上限額を出す式の意味、年収500万円の会社員を例にした手計算の手順、所得税率によって変わる特例分の控除率、上限を超えて寄付したときに自己負担がどれだけ増えるかを、実際の数字でまとめます。
ふるさと納税で戻る税金は3つに分かれる
ふるさと納税は、自治体への寄付額から2,000円を引いた残りが、所得税と住民税から差し引かれる仕組みです。差し引かれる税金は、総務省の説明どおり次の3つに分かれます。
| 控除の種類 | 計算 | 上限 |
|---|---|---|
| 所得税の寄附金控除 | (寄付額 − 2,000円) を所得から差し引く。戻る額はおおむね × 所得税率 × 1.021 | 総所得金額等の40% |
| 住民税の基本分 | (寄付額 − 2,000円) × 10% | 総所得金額等の30% |
| 住民税の特例分 | (寄付額 − 2,000円) × (90% − 所得税率 × 1.021) | 住民税所得割額の20% |
3つを足すと、所得税率がいくつでも「(寄付額 − 2,000円) × 100%」になるように作られています。所得税で戻る割合が小さい人は特例分が大きく、所得税で戻る割合が大きい人は特例分が小さくなって、合計がちょうど寄付額 − 2,000円にそろうわけです。
ところが特例分にだけ「住民税所得割額の20%まで」という上限があります。寄付額を増やしていくと、いずれ特例分がこの20%に届き、そこから先は合計が寄付額 − 2,000円に届かなくなります。この境目の寄付額が、いわゆる控除上限額(自己負担2,000円で収まる寄付額の上限)です。
控除上限額の式と、所得税率ごとの特例分の控除率
特例分がちょうど上限に届く寄付額を式にすると、「控除上限額 = 住民税所得割額 × 20% ÷ (90% − 所得税率 × 1.021) + 2,000円」になります。1.021は復興特別所得税(所得税額の2.1%)のぶんです。分母の「90% − 所得税率 × 1.021」が特例分の控除率で、所得税率ごとに次の値になります。
| 所得税率 | 判定に使う課税所得 | 特例分の控除率 | 上限額 ÷ 所得割額の目安 |
|---|---|---|---|
| 5% | 195万円以下 | 84.895% | 約23.6% |
| 10% | 195万円超 330万円以下 | 79.79% | 約25.1% |
| 20% | 330万円超 695万円以下 | 69.58% | 約28.7% |
| 23% | 695万円超 900万円以下 | 66.517% | 約30.1% |
| 33% | 900万円超 1,800万円以下 | 56.307% | 約35.5% |
| 40% | 1,800万円超 4,000万円以下 | 49.16% | 約40.7% |
| 45% | 4,000万円超 | 44.055% | 約45.4% |
所得税率が高い人ほど特例分の控除率が下がるので、同じ所得割額でも上限額は大きくなります。所得税率10%の会社員なら「所得割額のおよそ4分の1+2,000円」が上限の目安です。
年収500万円・独身の会社員で上限額を手計算する
東京都の協会けんぽに加入する40歳未満の会社員で、年収500万円(給与のみ)、扶養家族なしの場合を順に計算します。社会保険料は健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担で年721,460円です。
- 1
給与所得を出す
年収500万円 − 給与所得控除144万円 = 356万円。これが総所得金額等です。
- 2
住民税の課税所得を出す
356万円 − 社会保険料721,460円 − 住民税の基礎控除43万円 = 2,408,000円(1,000円未満切り捨て)。
- 3
住民税の所得割額を出す
2,408,000円 × 10% − 調整控除2,500円 = 238,300円。住民税決定通知書の「所得割額」にあたる金額です。
- 4
特例分の上限を出す
238,300円 × 20% = 47,660円。特例分はこの金額までしか増えません。
- 5
所得税率を判定する
2,408,000円 − 人的控除差調整額5万円 = 2,358,000円。195万円超330万円以下なので所得税率10%、特例分の控除率は79.79%です。
- 6
上限額を出す
47,660円 ÷ 79.79% = 59,731円。2,000円を足した61,731円が控除上限額で、ポータルサイト風に1,000円未満を切り捨てると61,000円です。
上限ちょうどの61,731円をワンストップ特例で寄付すると、住民税の基本分5,973円、特例分47,659円、申告特例控除6,098円の合計59,730円が翌年度の住民税から差し引かれ、自己負担は2,001円です。住民税の所得割や社会保険料の計算そのものは所得税と住民税の計算方法で詳しく解説しています。
上限を超えて寄付すると自己負担はどれだけ増えるか
上限を超えた部分は特例分が増えないため、控除は基本分の10%(確定申告なら所得税の分も)しか増えません。年収500万円・独身の例で、ワンストップ特例を使った場合の自己負担は次のとおりです。
| 寄付額 | 控除の合計 | 自己負担 | 返礼品(寄付額の3割)との差 |
|---|---|---|---|
| 61,000円(上限以内) | 58,999円 | 2,001円 | +16,299円 |
| 71,000円(上限+1万円) | 60,658円 | 10,342円 | +10,958円 |
| 91,000円(上限+3万円) | 62,658円 | 28,342円 | −1,042円 |
| 111,000円(上限+5万円) | 64,658円 | 46,342円 | −13,042円 |
返礼品は法律で寄付額の3割以下と決められています。仮に返礼品の価値がちょうど3割あったとしても、この例では上限を3万円超えたあたりで自己負担が返礼品の価値を上回ります。実際の返礼品は3割より安いことが多いので、上限ぎりぎりではなく、計算した上限より少し下の額にとどめておくのが安全です。
- 上限を超えても控除がゼロになるわけではなく、超えた部分の約1割は戻る
- 自己負担2,000円は寄付先の数に関係なく1年に1回だけかかる
- 事業所得・不動産所得がある人は、所得割額が給与だけの場合と変わるので、その所得を含めて計算する
シミュレーターで上限額と内訳を確かめる
ふるさと納税 上限額シミュレーターの「上限額を調べる」タブで年収と家族構成を入れると、控除上限額の目安と計算上の上限、住民税の所得割、特例分の上限(所得割の20%)、特例分の計算に使う所得税率と控除率が表示されます。上に書いた手計算の各段階の数字をそのまま確認できます。
結果の下には、上限まで寄付した場合に所得税・住民税の基本分・特例分からいくらずつ戻るかの帯グラフと、上限を1万・3万・5万円超えたときの自己負担の表が出ます。源泉徴収票が手元にあれば、社会保険料を「源泉徴収票の金額を入れる」に切り替えて「社会保険料等の金額」を入れると、自動計算より正確になります。年収・家族構成別の目安をざっと見たいときは年収別・家族構成別の上限額早見表も参考にしてください。
よくある質問
- ふるさと納税の上限額はどうやって計算しますか?
- 住民税所得割額 × 20% ÷ (90% − 所得税率 × 1.021) + 2,000円で計算します。年収500万円・独身の会社員なら所得割額238,300円、所得税率10%なので、238,300円 × 20% ÷ 79.79% + 2,000円 = 61,731円が上限です。
- 住民税決定通知書の所得割額から上限を出せますか?
- 出せます。所得税率10%の人なら所得割額のおよそ25%+2,000円が目安です。ただし通知書の所得割額は前年の所得にもとづくので、今年の年収が大きく変わる人は今年の見込みで計算し直してください。
- 上限を少し超えたら損になりますか?
- 超えた部分は約1割しか戻らないので、そのぶん自己負担が増えます。年収500万円・独身の例では、上限+1万円で自己負担は10,342円になります。返礼品の価値を考えればすぐ損になるわけではありませんが、上限+3万円あたりで逆転します。
- 特例分の控除率の1.021は何ですか?
- 復興特別所得税のぶんです。所得税には2037年まで所得税額の2.1%の復興特別所得税が上乗せされるため、所得税で戻る割合は所得税率 × 1.021になります。特例分はその残りを埋めるので、90%から所得税率 × 1.021を引いた率になります。
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