年収の壁とは|106万・130万・160万で手取りはどう変わる
「扶養に入れる年収はいくらまでか」という話には、性格の違う複数の線が混ざっています。税金の壁は超えても手取りが減りませんが、社会保険の壁は1万円の差で手取りが14万円近く減ります。この記事では4つの壁を金額で区別します。
4つの壁を区別する
「年収の壁」と呼ばれるものは、税金の線と社会保険の線に大きく分かれます。令和7年分からの制度では次のようになっています。
| 年収 | 何の線か | 超えるとどうなるか | 手取りへの影響 |
|---|---|---|---|
| 110万円 | 住民税がかかり始める | 所得割と均等割がかかる | 小さい(年収111万円で6,100円) |
| 106万円 | 社会保険の加入(適用拡大の対象) | 健康保険・厚生年金に自分で加入 | 大きい(約14%が引かれる) |
| 130万円 | 社会保険の加入(それ以外) | 扶養から外れて自分で加入 | 大きい(約15%が引かれる) |
| 160万円 | 所得税がかかり始める | 課税所得が発生する | 小さい(年収165万円で2,000円) |
かつて言われた「100万円の壁」「103万円の壁」は、給与所得控除の最低保障が65万円に、基礎控除が最大95万円に引き上げられたことで、それぞれ110万円・160万円に移動しました。数字だけが独り歩きしやすいので、いま自分に関係する線がどれかを先に確かめてください。
税金の壁を超えても手取りは減らない
住民税や所得税がかかり始めても、増えた収入以上に税金が増えることはありません。社会保険に加入しない前提で、年収ごとの手取りを並べます。
| 年収 | 所得税 | 住民税 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 105万円 | 0円 | 0円 | 104万4,225円 |
| 110万円 | 0円 | 0円 | 109万3,950円 |
| 111万円 | 0円 | 6,100円 | 109万7,795円 |
| 120万円 | 0円 | 13,800円 | 117万9,600円 |
| 150万円 | 0円 | 43,600円 | 144万8,150円 |
| 160万円 | 0円 | 53,600円 | 153万7,600円 |
| 165万円 | 2,000円 | 58,500円 | 158万425円 |
110万円を超えると住民税の均等割5,000円が一度にかかるため、年収111万円の手取りは110万円のときより3,845円しか増えません。ただし減ってはいません。所得税に至っては、年収165万円でも2,000円です。税金の壁を理由に働く時間を抑える必要は、ほとんどないと言えます。
106万円と130万円のどちらが自分の線か
106万円は「勤務先の社会保険に自分で加入する」線、130万円は「配偶者などの扶養から外れる」線です。次の条件をすべて満たす人は106万円が自分の線になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額が8.8万円以上(年収106万円相当。賞与・残業代・通勤手当は含めない)
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない
- 従業員51人以上の企業に勤めている
ひとつでも外れる場合は130万円が線です。なお130万円は「今後1年間の見込み収入」で判定するため、年の途中で月額108,334円を超える働き方に変わった時点で扶養から外れることがあります。1月から12月の合計で判定する税金の壁とは考え方が違う点に注意してください。
また、配偶者側の控除(配偶者控除・配偶者特別控除)は年収160万円までは満額のままです。年収600万円の配偶者の手取りは、あなたの年収が160万円までは71,800円の控除効果が保たれ、170万円で62,700円、180万円で42,500円と段階的に減り、201万円ほどでなくなります。急に消えるわけではありません。
加入して得られるもの
手取りが減る一方で、社会保険に入ると受けられる保障が増えます。金額だけで判断すると見落とす部分です。
- 将来の年金が増える:国民年金に上乗せして厚生年金が受け取れます。加入期間と標準報酬月額に応じて終身で増えます。
- 傷病手当金:病気やけがで働けない期間、標準報酬月額の約3分の2が最長1年6か月支給されます。扶養内では受けられません。
- 出産手当金:産前産後休業の期間に同じく約3分の2が支給されます。
- 障害厚生年金:障害の状態になったとき、国民年金の障害基礎年金に上乗せされます。3級は厚生年金だけの給付です。
- 保険料の半分を会社が負担:自分で国民健康保険・国民年金に入る場合と違い、半分は会社が払います。
配偶者の勤務先から家族手当が出ている場合は、その支給条件も確認してください。「扶養の範囲内であること」が条件になっていると、手当の分だけ世帯の手取りがさらに減ることがあります。
ツールで自分の壁を確かめる
- 1
「年収の壁」タブを開く
年収90万円から220万円までを1万円刻みで計算した手取りの折れ線が表示されます。
- 2
加入の条件を選ぶ
勤務先が適用拡大の対象(週20時間以上・従業員51人以上など)かどうかを切り替えると、106万円の線と130万円の線が入れ替わります。
- 3
自分の年収を入れる
住民税・所得税・社会保険の判定結果と、手取りの内訳が表示されます。加入ラインの直前の手取りに戻るために必要な年収も出ます。
加入した場合の保険料がどう計算されるかは社会保険料の計算方法、税金側の仕組みは所得税と住民税の違いで確認できます。フルタイムで働く場合の手取りは手取りの計算方法の早見表が参考になります。
よくある質問
- 年収の壁は結局いくらですか?
- 税金の壁は住民税が110万円、所得税が160万円です。社会保険の壁は、週20時間以上・従業員51人以上の勤務先などの条件に当てはまれば106万円、当てはまらなければ130万円になります。手取りへの影響が大きいのは社会保険の壁だけで、税金の壁は超えても手取りが減ることはありません。
- 106万円を超えると手取りはいくら減りますか?
- 年収105万円のとき手取りは104万4,225円ですが、106万円で社会保険に加入すると90万5,226円になり、13万8,999円減ります。元の手取りに戻るのは年収124万円です。130万円の線の場合は、129万円の126万205円が130万円で110万370円へ15万9,835円減り、151万円で元に戻ります。
- 103万円の壁はなくなったのですか?
- 所得税がかかり始める線が160万円に移動しました。給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に、基礎控除が最大95万円に引き上げられたためです。住民税がかかり始める線も100万円から110万円に上がっています。ただし社会保険の106万円・130万円は別の制度なので、この改正では動いていません。
- 配偶者控除は年収いくらまで受けられますか?
- 配偶者の年収が160万円までは、配偶者控除または配偶者特別控除で満額(所得税38万円・住民税33万円)が受けられます。160万円を超えると段階的に減り、201万円ほどでなくなります。年収600万円の人が配偶者を扶養する場合の効果は71,800円で、配偶者の年収が170万円になると62,700円、180万円で42,500円に下がります。
- 社会保険に入ったほうがよい場合はありますか?
- 手取りだけを見れば加入ラインの直前が有利ですが、厚生年金は将来受け取る年金を終身で増やし、傷病手当金や出産手当金の対象にもなります。保険料の半分は会社負担です。回復に必要な年収(106万円の線なら124万円、130万円の線なら151万円)まで働けるなら、手取りも保障も増える形になります。
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問題は社会保険の線です。自分で健康保険と厚生年金に加入すると、年収の約15%が保険料として引かれます。106万円の線を例にすると、次のようになります。
年収を1万円増やしただけで手取りが13万8,999円減り、元の手取りに戻るのは年収124万円です。つまり105万円から124万円までの約19万円分は、働いても手取りが増えない区間になります。これが「働き損」と呼ばれるものの正体です。
130万円の線でも同じことが起きます。年収129万円の手取り126万205円に対し、130万円では110万370円と15万9,835円減り、元に戻るのは151万円です。超えるなら中途半端に超えず、回復する年収まで一気に増やすか、手前で抑えるかのどちらかが合理的です。